ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31
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マツダ技報 2013 No.31
No.31(2013)マツダ技報この技術を活用して損傷度の高い位置を作らない方案設計や,同部位での鋳抜きピン必要形状の廃止,埋め金化による高機能型材の部分適用などの対策を金型設計に織り込むことが可能となった。(4)キャビティ真空度&鋳造圧の計測製造工程の安定化を目的として鋳造条件センシングを実施するため,型構造もこれに対応する必要がある。その代表例がキャビティ内減圧度と鋳造圧の計測機構である。従来,減圧度は減圧タンク手前の配管で計測していたが,この位置では減圧タンクの影響が大きくキャビティ内減圧状態の変化を詳細に評価できなかった。そこで,キャビティ内雰囲気を直接計測可能なセンサを設置した。設置にあたっては,充填初期の溶湯飛び込みによるセンサ破損などの問題を抑制するために,溶湯挙動を考慮したセンサ構造を採用し,減圧度の微妙な変化をモニタ可能とした。鋳造圧計測も同様で,従来のダイカストマシン加圧力の評価から,キャビティ内鋳造圧の直接計測に変更すべく,エジェクタピン座にロードセルを設置する方式に変更した。これも,実際にモノを作っている場所の状態を計測するという意味で非常に効果的である。3.3工程設計領域の施策厳しい条件にさらされるダイカスト金型の状態変化を正確にとらえて適切にメンテナンスすることは重要である。今回,メンテナンス時に,金型機能を評価するシステムを導入した。以下にその事例を紹介する。(1)冷却水流量チェックシステムダイカストにおける金型冷却は品質の生命線であるが,従来メンテでは冷却経路のサビ/垢とりと通水確認が主であった。一方,金型設計では,適切な金型冷却のために冷却点ごとの必要水量を想定している。従って,型機能評価のためには水量評価が不可欠だが,100か所を超える冷却点を計測するのは現実的でない。そこで冷却系統ごとに生産条件での通水量をチェック可能なシステムを導入した。(2)金型摩耗量検知システム0.1mm単位で肉厚マネジメントしても,金型摩耗が発生すれば寸法は大きくばらつく。これを検出するためには摩耗による金型形状面の寸法変化をチェックする必要がある。従来は,これを可搬式の三次元測定器を用いて行っていたが計測点の網羅性や計測スピードで問題があった。目的からすれば,摩耗の発生を検知できれば良いので,1/100mm台での計測精度は必要ない。そこで,非接触計測機を導入し形状面の変化をマスタデータとの比較で検知するシステムを確立した。型摩耗検知にとどまらず,金型損耗に関する基礎データとして新たな技術開発にも活用している。4.まとめ以上,SKYACTIVエンジン実現のために構築してきた金型技術を見てきたが,最後に成果を紹介する。(1)製品の高機能化とコスト改善の両立シリンダブロックの一般肉厚2.5mmを達成,その他,各部位の除肉などと合わせて3kgの軽量化を実現した。また,サイクルタイムの短縮,加工取り代の最小化,金型補修費用の改善などにより,従来製品比での大幅なコスト改善も実現した。一般的には相反すると考えられている「機能」と「コスト」を高いレベルでの両立という課題をブレークスルーできたのではないかと評価している。(2)人財育成一方で,挑戦することで見えてきた問題も多く,今後も取り組むべき課題は多い。しかし,その解決は次の進歩への近道でもある。高い目標に挑戦し,自ら変革し続けることが「日本のものづくり」の生きる道であると認識し,金型技術で「お客様価値を実現」することの重要性を実感できた活動であり,このプロジェクトに携わったメンバがそれを共有し成長したことが最大の成果である。参考文献(1)菅野,植原:アルミニウム合金ダイカストその技術と不良対策,東京,カロス出版,p.261(1997)■著者■大塚真河野一郎小国英明菅谷智竹村幸司佐々木大地―201―