ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)限を加えることは容易にできるが,そうするとドライバは,例えば自分のスマートフォンを片手で持ち,画面を見ながら操作する欲求を押さえながら走ることになり,その操作に及んでしまった際には事故という最悪の結果を招きかねない。本当にお客様のことを考えるならば,安全に操作できる環境を提供すべきと考え,マツダコネクトの導入に合わせてあらためてHMIの再点検を行った。2. HMIの再点検これまでもマツダでは「運転に集中できるHMI」を開発してきた。ディスプレイの配置やメータの視認性など,経験を踏まえながら,ある基準を設けてデバイスの配置,設計をするスタイルであったが,今回の新型アクセラでこのHMIを再点検する上では,もう一度人間にとって理想のインタフェースはどうあるべきかを考えた。つまり人間が不注意状態に陥るとはどのようなシーンの時で,そのシーンにおける不安全リスクを最小限にするためには,どのような設計制御因子があるのかを整理することから始めた。ドライバの注意が散漫になり,本来向けなければならない“運転への注意”が疎かになることを,英語ではドライバディストラクションと呼ぶ。米国の運輸省道路交通安全局(NHTSA)は,このドライバディストラクションを深刻な問題ととらえ,2013年4月にガイドラインを発行した(1)。そこにも記載があるが,運転中には次の三つのディストラクションがある。(1)コグニティブディストラクション前方道路から“心”が離れる際の不注意状態(2)ビジュアルディストラクション前方道路から“目”が離れる際の不注意状態(3)マニュアルディストラクションステアリングから“手”が離れる際の不注意状態以下に,それぞれのディストラクションを最小限にする考え方と設計制御因子について述べる。2.1コグニティブディストラクションの最小化「意識のわき見」とも表現できるこのディストラクションは,運転中に運転以外の操作をしようとする際に,どこを見ればよいか,またどのような操作をするか,といった“迷い”が生じることである。これを最小限にするための制御因子は,「情報の配置」と「使い方」であり,それぞれ次のように考え方を決めた。(1)情報を明確にゾーン配置する走行中に運転以外のことに意識が向く時間を最小限にするためには,必要な情報を得れば素早くまた運転に意識が戻る,また不必要なものに意識を奪われないようにするために,Fig. 1に示すように明確にしかもシンプルにゾーンを分けて配置する。Fig. 1 Zone Location of Information(2)分かりやすい使い方自動車に限らず,日常使う家電製品においても分かりやすい使い方(ユーザビリティ)になっていることは重要である。新型アクセラにおいて,センタディスプレイで表示し,後に説明するコマンダスイッチで操作する方法については,このユーザビリティの基本に立ち返って構築した。それは,次に示すISO9241で定義される指標や原則に基づいて開発を行った。・有効さ:特定の目標を達成する上での正確さ,完全さ・効率:目標を達成する際に費やした資源・満足度:不快さがない,及び製品への肯定的な態度これらの指標で優れたユーザビリティを構築する上でのガイドラインとしてはISO9241-110を参考にした。・タスクへの適合性:効果的,効率的な操作を助けること・自己記述性:適切なフィードバックで状態がわかる・可制御性:ユーザが操作の主導権を持つ・利用者期待への合致:メンタルモデルに合致する・誤りに対しての許容度:ミスを容易に修正できる・個別化への適合性:ユーザがカスタマイズできる・学習への適合性:使い方を学習することを支援する2.2ビジュアルディストラクションの最小化前方道路からコクピット内の表示に目を移す際のいわゆる「わき見」で前述の「意識のわき見」と区別するならば「見るわき見」と表現することになる。これを最小限に留めるためには“わき見時間”を最小化することである。わき見時間は,次の三つの段階に分かれる。(1)前方道路から視線を移動する(2)遠方から近方へ焦点を調節する(3)表示内容を判読するそれぞれの時間を最小限にする考え方を以下に示す。(1)視線移動時間運転中に前方道路を見ている状態から,車内のディスプレイなどの表示に目を移す際に,視線移動距離が長ければ長いほど時間はかかる。マツダではその程度を実際に測定して以下の関係を導き出した。―30―