ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報いくが,マツダでは,モデルという新たなイネーブラを駆使する視点を加え,MBDプロセスそのものに広がりを持たせることから考えた。それは,従来開発のV字プロセスの外にあったものをモデルでつなぐことである。車両のシステム構想の前にある「市場要求の把握」と部品設計の次にある「生産品質の開発」のプロセスをモデルでつないでFig. 2に示すMBDとしての新たなV字プロセスを設定した。その上で,この新たなプロセスを鳥瞰し,モデルの役割を定義した。以下,MBD V字プロセスの各開発フェーズにおけるモデルの役割を述べる。制動,操舵性能への影響,あるいは路面状況や温度による電気系への信頼性要件などを早期に抽出することができる(Fig. 3)。もちろん,実走行で分析しないと抽出できない条件も未だ沢山あるが,試験情報の反映先となるモデルを整備することで,実走行の知見を効率良く蓄積する役割もモデルに持たせている。このように,仮想試験の試行錯誤で,問題抽出の網羅性を向上させるだけではなく,市場要求の情報を蓄積し,開発コード化する重要な役割をモデルに持たせている。VehicledesignVehiclevalidationMarket needsalignmentFig. 1 General V-Type Development ProcessVehicledesignUnitdesignUnitdesignPartdesignPartdesignProductquality designPartvalidationPartvalidationUnitvalidationUnitvalidationVehiclevalidationFig. 2 Model Based V-Type Development Process3.各開発フェーズにおけるモデルの役割3.1市場要求の把握モデル車を開発するためには,その車の顧客要求,環境条件を正しく把握し,それを達成,保障すべき目標として開発要件に反映させる必要がある。従来の内燃機関のみを搭載した車であれば,その長い経験の中で,これらの要求はほぼ把握できており,開発コード化できている。しかし,今後,各種電気駆動システムの採用拡大,あるいは従来とは異なる燃焼方式の採用,そしてそれらの組み合わせを考えた場合,市場要求の把握から再構築する必要がある。この課題に効率良く対応するために,モデルを活用している。燃費や,操縦安定性などの走行性能を予測するモデルをベースに,道路の勾配,路面状況,交通,温度,積載量などの環境,使用条件を付加することで,すなわち仮想空間で車両モデルをフリート走行させることで,運転,環境が与える影響を早期に抽出している。例えば新たなエンジン特性や,モータ特性によるドライバビリティやFig. 3 Driver and Market Ground Model Image(Altitude, Climate and Road Model)3.2車両のシステム構想モデル開発初期におけるモデルの重要な役割は,目標とする車両性能をサブシステムへ最も効率良く機能配分することである。このシステム構想モデルには,燃費や走り,操縦安定性,NVHなどの車両性能を表現でき,かつ,その性能とエンジン,トランスミッション,シャシー,ボデー,制御などのサブシステムとの機能の関わりを分析可能であることが求められる。一般に,緻密なモデルを組み合わせて車両モデルを作り上げると,性能現象は表現できても,その複雑さのために,性能と各サブシステムの関わりが見えにくくなる。このため,車両のシステム構想では,機能配分に必要な最低限のモデル要件を性能ごとに定義し,不要な情報を排除した専用のコンセプトモデルを活用している。ここで用いるサブシステムのモデルは,先行して開発した要素技術の実験結果や,それを再現する詳細モデルなどをベースに,モデル構成の低次元化を行う。具体例としては,アクセル操作に対する加速度応答性を求めるために,エンジンの複雑な燃焼モデルを用いるのではなく,1次元の燃焼モデルを用いたり,あるいは車両の連成振動を解くために,必要最小限の周波数までを表現できるドライブラインの振動モデルを用いたりしている。なお,これらのモデルは,計算速度を向上させるための単純化ではなく,機能の関わりを理解できるコンセプト化(ホワイトボックス化)が重要となる。これらのコンセプトモデルを組み上げたシステムモデルで,車両全体をエネルギー視点,運動視点で見渡し,新規のエンジンやトランスミッション,電気駆動系の特質に応じた最適な機能配分を開発の初期に行っている(Fig. 4)。―45―