ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報両立を目指してきた。本稿では,制御の品質確保と短期開発を実現するために開発し,活用してきた制御の品質確認手段(机上検証システム)について紹介する。2. MBDと机上検証の実現2.1開発/検証プロセスとMBDの役割自動車の制御開発で一般的に用いられている, V字で表現した開発プロセスをFig. 1に示す。V字の右側は,実機や実際の車両を使った開発段階(検証段階)であり,ここで不具合が発覚した場合には大きな手戻りにつながってしまう。手戻りを最少化するには,各開発段階で細かく検証サイクルを回して,不具合の後工程流出を防止する必要がある。SKYACTIV-Gの制御開発では,MBDを適用することにより各段階での検証を可能とした。Fig. 1 MBD and Verification System in V-Process2.2 MBDと机上検証システムMBD適用に際しては,各制御モデルと制御対象モデル,そして,机上検証システムを2段階に分けて開発した。各々の定義は以下の通り。①制御モデル:エンジン制御の仕様をMATLAB/Simulinkなどのモデリングツールで表現したもの。②制御対象モデル:エンジンや車両などの動きをモデリングツールやプログラミング言語で表現したもの。③机上検証システム:制御の品質を確認するシステムであり,制御単体で検証するシステムや制御モデルと制御対象モデルを結合して動作検証するシステム。第1段階では,制御モデルの構成を定め,制御対象モデルを開発した(3章)。机上検証システムは,左バンク(Fig. 1)の制御モデル開発(ソフトウェア設計)段階で,静的解析システム及び,制御モデルと制御対象モデルをモデリングツール上で接続したMILS(Model In the Loop Simulation)環境を整備した。また,右バンク(Fig. 1)では制御ソフトウェアの検証段階でHILS(Hardware In the Loop Simulation)環境を構築した。更に,検証結果の管理については構成管理システムを活用して,モデル開発履歴と検証結果の可視化を実現した。第2段階では,机上検証システムの自動化と検証速度の改善を進めてきた。具体的には,左バンクの静的解析システムの検証時間を改善し(4.1節),MILS環境においては,新たに開発した「高速MILS環境」へ置き換えることで,短時間で網羅的な検証ができる仕組みを構築した(4.2節)。また,高速MILS環境については,大きく分けて下記の3つの機能を備えた検証環境として整備した。①C言語化及び並列演算による検証速度の向上機能。②自動車の操作系統を再現したGUI ( GraphicalUser Interface)及び自動走行機能。③車両系制御,TCM(Transmission Control Module),DSC ( Dynamic Stability Control ),MRCC(Mazda Radar Cruise Control)などと制御モデル間の多重通信や協調制御を確認できる機能。以降では,制御と制御対象モデルの概要及び,机上検証システムの自動化と検証速度の改善について示す。3.制御モデルと制御対象モデルまずMBDの中核を成すモデルについて簡単に説明する。3.1制御モデル(1)SKYACTIV-Gの制御は,複数のセンサ,アクチュエータ信号を入出力に持ち,またTCMやDSCなどの複数の車両系制御と多重通信処理を行っている。この多くの外部信号と整合性を取りながら,複数の制御機能を効率的に開発するためにSKYACTIV-Gの制御モデルは,エンジンや車両の挙動を制御するアプリケーション層と外部信号を物理変換するプラットフォーム層に分ける構造を選択した(Fig. 2)。また,複数の機能を効率的に開発するため,機能ごと,更に時間や角度同期単位にモジュールを分ける構造を採用して,複数の技術者による並行開発を実現した。Fig. 2 Framework of Engine Control―49―