ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)特集:モデルベース開発11SKYACTIVエンジンの性能開発に活用したMBDMBD Applied for the Development of SKYACTIV Engines要約横畑英明*1佐藤圭峰*2和田好隆*3Hideaki YokohataKiyotaka SatoYoshitaka Wada田所正*4*5小林謙太植木義治*6Tadashi Tadokoro Kenta Kobayashi Yoshiharu UekiSKYACTIVエンジン(SKYACTIV-G及びSKYACTIV-D)は,従来に比べてはるかに高度に燃焼をコントロールして出力,燃費ともに高い性能を実現した(1)(2)。この開発は従来型の実験中心の手法では困難であり,実験と計算モデルをうまく組み合わせた「モデルベース開発」(MBD:Model BasedDevelopment)への変革が不可欠であった。マツダでは構想設計,詳細設計の各段階で実用的に使えるモデルの開発を進め,MBDを活用してSKYACTIVエンジンを世の中に送り出すことができた。SummarySKYACTIV engines (SKYACTIV-G and SKYACTIV-D) achieve high power and low fuelconsumption by controlling a far more complex combustion than in conventional engines. Theconventional development approach, which depends on experimental results, couldn’t realize such asophisticated technology. For this reason such approach needed to be replaced with Model BasedDevelopment (MBD) applying both experiment results and CAE results. Mazda improved theaccuracy and efficiency of CAE process to create an environment for MBD before being able toimplement MBD in conceptual and detailed designs. Consequently, Mazda was successfully able tobring SKYACTIV engines into the world.1.はじめにSKYACTIVエンジンの目指した出力・燃費性能は,従来の延長線上の開発手法では実現が困難であった。今までになく複雑な開発をやりきるために,マツダでは多くのCAE(Computer Aided Engineering)の解析技術を開発し,CAEツールつまりモデルと実験をうまく活用したMBDでエンジン諸元や細かな形状を決定した。本稿ではこうしたMBD技術について概要を説明する。2.エンジン性能予測におけるMBDの必要性エンジンの設計は,車両としての性能や搭載性も考慮して吸排気管長など大きな諸元を決定する企画・構想設計段階から,ピストン形状など細かい部品の形状を決定する詳細設計段階に至るまで,多くの検討が必要である。Fig. 1にエンジン開発のV字プロセスを示すが,左バンクでの設計により図面が完成した後,右バンクで実機評価を行う。実機評価で目標が未達成であると左バンクに戻らざるを得ず,開発期間,開発工数ともに大きな損失になる。特にSKYACTIVエンジンは,低速域から高速域まで高い出力性能と燃費性能を達成する必要があり,従来よりも困難な開発が予測された。そのため,左バンクの開発を充実させることが重要なポイントであり,従来のような実験中心の試行錯誤的な開発から,モデルを使ってメカニズムをきちんと把握した上で多くの諸元の最適化を机上で行う開発へと変革を進めた。具体的には吸排気系長さといった大きな諸元を決める構想設計段階では,吸排気管を長さと径で表現する1次元サイクルシミュレーション(1Dモデル)もしくは燃焼室を容積*1,3~6エンジン性能開発部Engine Performance Development Dept.*2技術研究所Technical Research Center―54―