ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

706050403020100302520151050マツダ技報No.31(2013)stability of combustionTypeATypeBGood Good GoodInjection timing Injection timing Injection timing(a)ExperimentInjector HoleLayoutStability of CombustionTypeATypeBTypeATypeBTypeATypeBBefore Optimization After Optimization(b)SimulationFig. 11 Difference of Stability of Combustion betweenInjector Type A and Type B (Effect of Nozzle Holes Layout)付近に向かって燃料粒子が回り込み,プラグに可燃混合気を形成させる役割を持つことがわかる。このように,1つ1つの噴霧の持つ役割を明確にしながら,噴霧レイアウト・ピストン形状を決めていった。また,市場におけるさまざまな運転条件や,経年劣化,製造上のわずかなバラツキにより,性能が低下することは防がなければならない。そこで,モデルを用いてロバスト性を確保可能な形状を探っていった。例えばインジェクタのわずかな製造バラツキが噴霧挙動に与える影響を網羅的に解析し,バラツキに強い噴霧レイアウトを決めていった。こうした検討により,開発当初に比べ性能が向上し,ロバスト性確保可能な形状を見つけることができた(Fig. 13)。5. MBDを支える効率化技術310deg. 320deg. 310deg. 320deg.(a) All Holles Spray (b) Secondary Holles SprayInitialdesignFinaldesignSDIFig. 12 Spray Droplet DistributionInjection timingPiston shape40 50 60 70 80(a)Stability of combustionEmission(HC)Hole layoutInitial designFinal designInjection timingSpray40 50 60 70 80(b) Emission(HC)Fig. 13 Improvement in Robustness by the ShapeOptimizationただし,インジェクタの噴霧レイアウトとピストン形状だけでも,組み合わせは無限にあるため,最適値を見つけることは難しい。そのためインジェクタの噴孔の1つ1つの役割を解明しながら開発を進めた。実機の計測では各噴孔からの噴霧の挙動を切り分けて考えることは困難であるが,モデルなら比較的容易である。例えばFig. 12(a)に全ての噴孔からの噴霧結果を表示したが,これでは各噴孔の役割がわからない。Fig. 12(b)に2段目から噴射された燃料液滴だけを表示させたが,ピストンキャビティ部から点火プラグ極めて複雑な燃焼で高性能を達成したSKYACTIVエンジンの性能開発では,従来にない膨大な量の解析実行が必須であった。複雑な現象を扱う3Dモデルの実行は,スーパーコンピュータを活用することもあり,CFDの知識の他にシステムの知識が必要である。それに加えて,モデルの作成,解析実行,結果処理の操作自体が難しい。更に,解析モデルの作成や条件設定にはさまざまなノウハウが必要である。こうした難しさから,精度の良い結果を出すためには長年の経験を積む必要があり,解析実行が可能なメンバは限られる。これでは十分な検討ができないため,解析の大幅な効率化を図る必要があった。そこで市販のCFDソルバを使って精度を確保した上で,マツダの解析業務を対象にして操作を簡易化し,更に多くの解析ノウハウを織り込んだ設計者向けCFDシステム(PT-ECS:Powertrain Easy CFDSystem)を独自に開発した(3)(Fig. 14)。このシステムはWindows PC上からスーパーコンピュータの存在自体を意識せず,解析ソフトの複雑な操作なしにCFD計算用データを作成,実行して結果を見ることができ,操作方法の習得時間はほとんど必要ない。解析ノウハウを組み込んでいるため,経験が浅くてもベテランと同様な結果を出すことができる。このシステムは2002年から量産開発に適用して,3Dモデルを使った開発を効率化している。従来のPT-ECSでは一般的な定常流及び非定常流の解析を対象にしていたが,SKYACTIVエンジンの開発にあたり,ピストンの動きなどを表現する移動メッシュを伴う筒内流動や,噴霧,燃焼解析にも活用できるよう機能を拡張した。また,自動実行の機能も大幅に強化して,従来に比べて約10%程度という少工数で解析が実行できるようになった(10)。例えば前述の噴霧挙動を液相・蒸気相ともに精度良く予測するためには,分裂計算など9つのパラメータの同定が必要であり(Fig. 15),従来は結果算出に200日以上かかっていた。こうした検討が,現在はPT-ECSを使い約5日で完了する。この効率化システムがあって初めて膨大な量の計算実―58―