ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報能の根本改善による構造体の大幅な質量低減をそれぞれ目指した。ダイレクト感,滑らかな変速についてはロックアップクラッチ及び変速クラッチを高精度で応答の良い,緻密な制御ができるようにしたいと考えた。スムーズで力強い発進性能についてはトルクコンバータの使用を発進時のみにできないかと考えた。これら理想実現のためにはロックアップの拡大がキーイネーブラとなるが,ロックアップの拡大は,こもり音/振動やショックなどのNVH性能の悪化を伴うためにこの克服が必要となる。なお,ATのロックアップ状態はトルクコンバータを作動させない直結状態であるため,振動構造上はMTと同等となるが,ATは一般にMTよりも厳しいNVH性能が求められる。これは,MTの場合はお客様が走行段位を自分の意志で選択するため,エンジンの運転領域変化(負荷・回転数の変化)に伴うNVH性能の変化にはある程度納得感が得られる一方,ATは段位などの運転状態がお客様の意図によらず変化するためである。つまりATでのロックアップの拡大はMTと同じ振動構造で,より厳しいNVH目標を達成しなければならないという非常にハードルの高い開発となる。軽量化に関してもトランスミッション開発の永遠の課題であるギヤノイズに代表されるNV性能と背反関係にある。構造の適正化などによる設計は従来からすでに追求されており,多段化の進む中,これまで通りの開発プロセス及び設計技術では大幅な軽量化は困難であるため,開発手法の抜本的な改革から取り組んだ。3.開発の考え方マツダのSKYACTIV技術を搭載した商品群は,パワートレイン(PT)から車両に及ぶすべての領域で同時刷新開発を行った。限られたリソースで効率的に開発するために,マツダでは一括企画に基づく一括開発を行った。これはエンジン,車種,仕向地などの全ラインアップを企画段階から見据え,全体最適となる仕様を一括して決めることで開発効率を向上させるものである。そのために,単に部品を共通化するだけではなく,共通化できない部品であっても,共通の設計コンセプト,共通の特性,共通の生産手法などを目指して開発した。一括企画の考えは,NVH開発にも適用した。FMEA(Failure Mode & Effect Analysis)をベースに開発初期段階で設計すべきNVH性能と関連する部品・起振力・振動現象を洗い出し,背反性能の見える化などを実施した。その上で全ラインアップを見据え,NVH性能の骨格となるシステム・部品の設計を企画段階から行った。その開発方法の事例を,前述のロックアップ拡大の弊害である“こもり音/振動”と,軽量化の弊害である“ギヤノイズ”について紹介する。4.モデルベースによる機能配分性能目標を達成するための機能を,各システム,更に下位層の各コンポーネントへ定量目標として配分することを機能配分と呼んでおり,NVH性能においても,低周波の振動から,高周波のギヤノイズまで,一括開発構想に基づいた機能配分を実施している。このNVH性能の機能配分をモデルベースで効率的に実践するために,実験部門ではNVHの起振力となるエンジン燃焼圧をはじめ,ATやドライブシャフトの振動伝達特性,そして車体の音響感度特性などを分析し,現象解明する一方で,解析部門ではそれをCAEモデルとして再現させると共に,モデルのアセンブリ,計算などの自動化を行い,開発技術として迅速に駆使できるツールを構築した。また,機能配分する上では,性能寄与度が高いコンポーネントで重点的に対策することが効果的かつ効率的であることから,入力伝達経路の寄与度の調査を,既存車両の実験解析で徹底的に実施した。これをベースに,新世代商品群で新規設計となるエンジンの起振力や制御,PT構造,車両構造等の変化を,モデルで予測することで,重点対策すべきコンポーネントへ確度の高い目標を設定した。4.1こもり音/振動の機能配分車両性能のこもり音/振動目標を,PTの目標に機能配分するために,実験による伝達経路解析(TPA:Transfer PathAnalysis)を実施した。車両とPTが結合される箇所であるエンジンマウント,排気系ハンガマウント,サスペンションブッシュの振動入力の寄与度を求め,その寄与度に応じた改善目標を設定した(Fig. 1)。特に寄与度の高いサスペンションブッシュの入力に対しては,それと結合するドライブシャフトのトルク変動入力へ目標値を機能配分したが,この部分に関しては必要となる改善代が大きいため,車体側の音響感度も改善する配分を行った。PT,車両の双方でこの機能目標を達成するよう課題解決に向け取り組んだ。Relative participation (%)10080604020Engine MountSuspension BushExhaust Hanger BushProblem areasby full-range lock-up010001500200025003000Engine speed [rpm]Fig. 1 Contribution of the Body Input by TPA(Transfer Path Analysis)―61―