ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)2. SKYACTIV-D i-stop迅速再始動技術2.1システム構成Fig. 1にSKYACTIV-D i-stopのシステム構成を示す。i-stopシステム特有のデバイスとしては,エンジン停止中でも燃料圧力を保持しエンジン再始動開始直後から燃料噴射できるコモンレールシステム,及びエンジン停止中でもエンジンの位置を正確に検出するための逆転検出可能な回転センサを採用した。Common RailSterter motorCrank angle sensorDual MassFlywheelTransmissionFig. 1 SKYACTIV-D i-stop System Configuration2.2再始動方法一般に,ディーゼルエンジンの始動は,スタータを駆動しエンジンを回転させながら各気筒のピストン位置を特定し,同時にコモンレール圧を上昇させて圧縮行程気筒に燃料を噴射,燃焼させることでエンジン回転数を上昇させていく。そのため,Fig. 2に示すようにスタータ駆動から2~3回程度燃焼させることができないサイクルが存在する。一方でSKYACTIV-Dで採用した一圧縮燃焼始動では,エンジン停止中に圧縮行程途中で停止している気筒(以下,第一圧縮行程気筒)を特定し,その気筒から燃焼を開始するため,SKYACTIV-Gのi-stopと同等の迅速再始動を実現できる。2.3第一圧縮行程気筒の着火技術前述のとおり,ディーゼルエンジンで迅速に始動させるためには第一圧縮行程気筒での燃焼が不可欠である。スパークプラグを持たないディーゼルエンジンで筒内に噴射した燃料を確実に着火させるためには,①筒内に着火性に優れた混合気を形成する,②着火に必要な筒内温度,圧力を確保するため第一圧縮行程気筒のピストン停止位置を下死点(BDC)寄りにする,の2点が有効である。SKYACTIV-D i-stopでは,これらを達成するため,再始動時に燃料を複数回分割して噴射することで着火性を確保する「多段プリ噴射制御技術」と,エンジンの停止過程でオルタネータ負荷を使い回転挙動を制御するとともに,停止直前の筒内の空気量を制御することでピストン停止位置をBDC寄りに制御する「エンジン停止位置制御技術」を採用した。これらの技術により,第一圧縮行程気筒から確実に燃焼させることができるようになり,アイドリングストップ状態からの再始動時間をSKYACTIV-G i-stopと同レベルまで短縮することができた。以下,一圧縮燃焼始動を実現するために開発した「多段プリ噴射制御技術」,「エンジン停止位置制御技術」について詳細を説明する。Engine speed[rpm]Fuel pressure[MPa]Engine speed[rpm]Fuel pressure[MPa]Command of engine startidle engine speedStart combustionInjection possible pressureSKYACTIV-D i-stop0.4sStart combustion0.7s(a)Normal start(b)Combustion startShortenedTime[s]Injection possible pressureTime[s]Fig. 2 Comparison of Engine Re-Start Behavior betweenNormal Start and SKYACTIV-D i-stop(1)多段プリ噴射制御技術(2)第一圧縮行程気筒では,通常の燃焼サイクルと比較して圧縮行程途中からの圧縮による低温低圧雰囲気により着火しにくくなる。このような筒内雰囲気で確実に着火させるためには,燃料リッチな混合気を長期間維持する必要がある。そのためには,噴霧貫徹力を抑制し,蒸発特性に優れた微粒化の良い噴霧を供給する必要がある。このことを踏まえ,次の多段プリ燃焼制御技術を検討した。①微粒化の良い噴霧を得るため,エンジン停止期間中コモンレール圧を保持し,多孔タイプ噴射ノズルを用いる。②ピストン燃焼室内に噴霧をトラップできるタイミングで,噴霧貫徹力を抑制した少量の噴射(プリ噴射)を複数回に分けて行うことで,燃焼室内の同じ個所に噴霧を重ね,長く漂う燃料リッチな混合気を形成する。③プリ噴射による燃料リッチな混合気を上死点(TDC)付近まで維持し着火・燃焼させ,筒内の圧力・温度を上昇させる。その結果,TDC付近で噴射するメイン―74―