ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報3.ラピッドプロトTCM環境ラピッドプロトTCM環境とは,ソフトウェア開発のV字サイクル短縮手段として導入したソフトウェア開発環境の総称である。下記の機能を備えたPCと対応するTCMで構成される。①ソフトウェア生成機能②リプログラミング(TCMへの再書き込み)③TCMのデータエミュレーション④TCM内データ,車両間通信のリアルタイムモニタ⑤データロガー本ラピッドプロトTCM環境を用いて,SKYACTIV-DRIVEの開発では,実際のTCMを使った機能検証や,実車や実トランスミッションを用いたキャリブレーション効率化をサポートする各種機能も合わせて実装した。3.1ソフトウェア生成機能ラピッドプロトTCM環境では,電気的な入出力と制御ソフトウェアの時間的管理(タスク管理)を扱う「ベーシックソフトウェア領域」と,変速制御などのトランスミッションの機能全般を扱う「アプリケーション領域」に,ソフトウェア構成上で分離した(Fig.3)。アプリケーション領域ではギヤ段制御や変速制御あるいは故障診断機能など,車両メーカごとの独自制御が織り込まれる。これらアプリケーション領域とOS(Operation System)の役割を果たすベーシックソフトウェア領域を分離,再リンクすることで,アプリケーション領域を自由に仕様変更し,TCMで動作可能なソフトウェアを即時生成する機能を実現した。Peripheral deviceBasic-software partsRotationsensor・・・・・・LiniorSolenoidCANinterface[Interface]FaultdiagnosisPhysicalvalueconversionCANmessageOn Board Diagnostic(Basic part)Application-software parts[Application module]Target GearInputmoduleOutputmoduleTask managerShift ControlHydraulic ControlFail-safe・・・・・・On Board Diagnostic(Application part)Fig. 3 Functional Definition of Control Software3.2開発環境構成機能開発やパラメータの車両適合に必要な開発環境として,一般的に使われているCCP(CAN CalibrationProtocol)をベースに通信プロトコルを効率化して採用した。開発中のTCMには,CCPをベーシックソフトウェア領域へ導入することにより,実作業で使用する機材は,ノートPCにCAN(Controller Area Network)インターフェースを組み込んだ構成を用いて実現した。従来機種における開発では,マツダのパワートレイン開発における当時の標準機材を使用しており,各種イネーブラ資産が活用できるメリットがあった。その一方で,専用コネクタを後付けした特殊TCMを試作する必要があり,専用機材とTCMとの間にインターフェースBOXを中継し,配線の取り回しや機材の配置など,開発における制約が存在していた。ラピッドプロトTCM環境では,トランスミッション制御開発に必要な基本機能を前述の5項目に整理して,必要機能を実現するための機材構成とし,汎用機器を活用したコンパクトで拡張性,汎用性の高い開発環境を構築した。4.リアルタイムシミュレーション(4)マツダでは従来から,実際の車両やエンジンあるいはトランスミッションなどの実機を用いずにコンピュータ上で机上検証できるソフトウェアシミュレーション環境を導入しており,ソフトウェアの品質検証に活用している。SKYACTIV-DRIVEの開発においては,車種,エンジン仕様あるいはトランスミッション諸元の組み合わせに対応できるようにシミュレーション環境を再整備すると共に,トランスミッション内部油圧のシミュレーション精度を実機同等まで向上させ,実時間と同じ時間軸でシミュレーション演算を行う環境を新たに構築し,開発プロセスにおける左バンクとなる機能開発へリアルタイムシミュレーションを採用した。4.1リアルタイムシミュレーション環境構成SKYACTIV-DRIVEの開発で導入したリアルタイムシミュレーション環境では,TCM及びエンジンを制御するPCM(Powertrain Control Module)は実機を採用し,各ユニットに接続されるアクチュエータやセンサなどを電子回路で構成した擬似負荷で模擬している(Fig. 4)。TCM,PCM以外のシミュレーション環境は,リアルタイムシミュレーション内に搭載するCPUモジュールで演算,制御される。CPUモジュールでは,エンジン及びトランスミッションの内部状態を,物理方程式を用いて高精度な仮想モデルで再現すると共に,補機類を含めた仮想車両モデルを演算している。作業者はアクセル,ブレーキなどを操作パネルで操作し,CPUモジュールによって現実時間と同じ時間軸で各モデルが演算され,リアルタイムシミュレーションが実行される。―81―