ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)TCMDummy loadTransmission modelOil pressureTurbine speedGear・・・Meter modelManual switchCANPCMDummy loadEngine modelEngine torqueEngine speedThrottle・・・Dynamic StabilityControl system modelOther modelReal-time simulation systemFig. 4 Diagram of Real-Time Simulation System4.2拡張モデルCPUモジュールに構成する仮想モデルを実車同様の単位に細分化することで,検証内容に応じてモデルから外部接続した制御ユニットに置き換えることを可能とした。トランスミッション油圧回路を仮想モデルで演算するのではなく,実トランスミッションに用いる油圧回路を接続したシミュレーション環境を新たに構築した。SKYACTIV-DRIVEで採用しているギヤ段変速制御では,従来機種にはない高精度な油圧制御が必要となる。これらの技術では,油圧回路上に発生する微小な影響の積み重ねが無視できない。仮想モデルによるシミュレーションでは精度上回避できない誤差が生じるため,結果としてトランスミッション実機を用いた検証工程の負担を増加させてしまう。その対策として,仮想モデルではなく実際の油圧回路を疑似負荷として接続することで,高精度油圧モデルの仮想トランスミッションを実現した。5.機能開発への活用事例トランスミッション制御開発では,ギヤ段変速時のクラッチ制御などトランスミッション単体で完結する機能開発のほか,エンジンやブレーキなどと協調する制御など,さまざまな機能を先述(Fig. 2)のV字サイクルに従って開発を行う。SKYACTIV-DRIVEの開発ではラピッドプロトTCMの導入により,マツダが開発するべきコアの制御であるアプリケーション領域を自由に仕様変更し,評価用の特殊環境を必要に応じて作成可能とした。合わせてリアルタイムシミュレーション環境を活用することで,特定の機能開発に特化させた評価環境の作成や,シミュレーション評価の実施を容易とした。5.1機能開発事例:故障診断の機能検証故障診断の機能検証には故障状態を作り出すために実車やトランスミッション実機を用いた評価が必要となる。しかしながら,実車やトランスミッション実機を用いて故障模擬あるいは機能検証するには,検証目的によっては故障発生状態の再現が難しいケースがあり,網羅的な検証を行うためには多くの工夫と工数が必要であった。マツダでは従来機種より,故障診断の機能検証にリアルタイムシミュレーション環境を活用していたが,SKYACTIV-DRIVEの開発では,サービス品質の向上を目的に故障部位を正確に特定できるよう故障診断機能を大きく進化させることにより,仕様設計の段階からリアルタイムシミュレーション環境を活用した。より網羅的な機能検証を行うため,自動実行可能なシミュレーション環境を新たに構築し,パターンごとの合否判断も自動判別可能とした。これを用いて数十万パターンの評価を実施し,開発工数の大幅削減と網羅的な検証による品質向上を実現した。更に,実車評価では危険が伴う,高車速での機能損失時のフェイルセーフ検証や,稀な発生頻度の故障形態での制御検証などにも活用しており,故障診断やフェイルセーフ制御開発の高品質化に貢献している。5.2機能開発事例:シフトインジケータ新型アクセラでは,新たにシフトレバー横にレバー位置を表示するためのシフトインジケータが設置されており,シフトインジケータ表示はTCMとメータシステムとの協調制御によって実現している。シフトインジケータ表示の機能開発においては,リアルタイムシミュレーション環境を用いて,メータ及びシフトインジケータの実機を駆動するシステムを構築し(Fig. 5),表示の応答性やユーザ操作に対する網羅的な品質確認を行った。その結果,インジケータ表示検証を早期に開発完了することに成功した。5.3機能開発事例:最適メータ表示制御パワートレインの魅力をより引き立てるために,車内のスピーカからエンジンサウンドを流す,あるいはギヤ変速時にタコメータを素早く動かす,という演出が一般化している。マツダにおいても, SKYACTIV-DRIVEの持つ本来の変速レスポンスを運転者が適切に感じられるようにするため,最適なメータ挙動を実現する技術開発を行った。レスポンス評価では,常にタコメータを見ながら評価することになり,実車では脇見運転となりがちで危険が伴う。また同じ変速を繰り返し行うことも,実車評価では多大な工数を要するが,リアルタイムシミュレーション環境をメータ評価用に再構築(Fig. 5)して繰り返し評価を実施し,短期間での技術開発を実現した。―82―