ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)その中で重要なのが,科学的な「観察力,洞察力」である。一見複雑とも思えるさまざまな現象も注意深く観察し考察してゆくと,1つ1つは基本的な原理・原則に基づいて起きており,それが組み合わさっていることが解き明かされるものである。それが,カラクリ=メカニズムの解明でありその行動をくり返してゆくことで科学的な「観察力,洞察力」が磨かれ,より複雑な・より深い現象の解明や相反する現象をブレークスルーして高度なレベルで両立できる技術の開発が可能となる。また一見原理・原則で説明できない特異点にも注目し,単なる計測誤差で片付けることなく,そこにも何か新しい発見や見落としがないか留意することも大切なことで,そこに大きな技術の宝が隠れているかもしれない。ただいたずらに膨大なデータを収集し,早急な結果を求めるのではなく,一歩一歩立ち止まりながら「洞察力」を磨きエンジニアとして成長する姿を望みたい。第3に,「共創」である。言うまでもなく,自動車やそれ以外の分野での技術進化は目ざましく高度化,複雑化している。電子技術の進化,材料の革新,加工技術の革新等それぞれの分野での研究開発を進めてゆくことは,もちろん重要であるが,それらとともに分野/企業/部門の壁を越えて,それぞれの技術を融合させてより高い価値を生む技術に昇化させてゆく「共創」活動が今後ますます重要になってくると考える。マツダモノ造り革新の中で,開発エンジニアと製造エンジニアが,理想構造/理想工程を一体となって追求したのが,SKYACTIV技術である。製造エンジニアが商品力強化のために何ができるか,開発エンジニアが生産性を上げるために何ができるか,立場が変わったように語る場面が非常に増え,風土が全く変化してきたといっても過言ではないと思う。デザイナと開発/製造エンジニアが,その美しいデザインテーマを損うことなくレイアウト,衝突安全性,空力,加工性,溶接性etc相反する性能を数限りなく議論を重ねながら,「魂動」デザインを具現化したと考える。このためには,それぞれの部門が前工程から後工程につなぐバトンタッチではなく,開発の初期から各エンジニアがその領域を超えて共同で1つの高い目標に向かって創造活動を行う必要がある。そのためには,一人一人のエンジニアが自分の専門領域を超えて,ボデーもシャシーもエレキ,パワートレインも,または開発も製造も品質保証もデザイン意匠も分かる,または車全体からその性能(衝突・NVH)を達成する機能配分やその機能を構造化,システム化できる,いわゆる「骨太エンジニア」の育成が必要であり,この「骨太エンジニア」達が,高い目標を「共創」してゆく活動が飛躍的に技術を向上させてゆくと考える。また今回,この「共創」活動をより活発して進めるためにイネーブラとして「モデルベース開発(MBD)」を特集した。「MBD」はメカニズムを把握し,モデル化し,パラメータスダディ等において性能の飛躍的な向上と品質のロバスト性の劇的な向上をはかるものである。今回SKYACTIV技術のパワートレイン領域に主に活用し,理想構造,理想特性を全ユニットに転写して同時多発種開発を可能として開発効率を大幅に向上させている。今後この「MBD」をエンジン/ボデー/シャシー/制御など車両全体をモデル化するとともに人間系/環境系のモデルと結びつけた「MBD」を実現することで,「共創」の活動が革新的に進化すると考える。最後に,「微差は大差」という言葉で締めくくりたい。自動車が誕生して以来,偉大な先人達は一歩ずつ着実に進化を続け,現代の優れた自動車技術の発展を実現している。先人達の歩みに深く感謝するとともに,その技術の進化にほんの微かな小さな一歩でも貢献できれば,幸せであると考える。―2―