ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31
- ページ
- 90/228
このページは マツダ技報 2013 No.31 の電子ブックに掲載されている90ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは マツダ技報 2013 No.31 の電子ブックに掲載されている90ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
マツダ技報 2013 No.31
No.31(2013)マツダ技報Shift IndicatorMeter unitTCMDummy loadTransmission modelMeter modelManual switchCANPCMDummy loadEngine modelDynamic StabilityControl system modelReal-time simulation systemFig. 5 Diagram of Real-Time Simulation with MeterSystem5.4機能開発事例:駆動力制御開発「意のままに」のコセンプトを実現するため,SKYACTIV-DRIVEではアクセル操作やカーブの曲率,路面勾配や外気温度などの周囲環境も考慮して,エンジン制御と協調して最適なエンジン出力と最適なギヤ段を選択する制御を採用している(例:コーナリング時のギヤ段保持制御(Fig. 6))。これらの機能開発では,制御の動作結果から運転者が感じ取るフィーリングが重要な開発視点となる。最初に定量的な視点から制御仕様を作成し,シミュレーション環境下で育成した後に,最終的な作りこみを実環境における車両評価にて行う。実車評価結果は定量的視点へフィードバックし,必要があれば仕様設計から再検討するプロセスを繰り返すことで,制御仕様を育成する。release gaspedalShift up issuppressed.[Vehicle speed][Gear]BrakingShiftdown isexecuted.CorneringUnnecessaryshift up issuppressed.With inhibit controladequate gear"Good feeling!"Re-accelerationThe currentgear ismaintained.normal controlFig. 6 Overview of Gearshift ControlSKYACTIV-DRIVEでは,ラピッドプロトTCM環境とリアルタイムシミュレーション環境を活用することで,机上における仕様設計の作りこみを実現した。また実車でのキャリブレーションや制御仕様評価を効率的に実施でき,ソフトウェアの即時生成機能を活用した迅速な仕様変更と再検証によって,従来機種より大きく進化した「意のままに」を実現する機能開発を短期間で実現した。6.次世代モデルベースアルゴリズム従来機種の開発では,TCMの性能による制約(プログラム容量や演算速度など)から一部の制御に,制御特性をマップパラメータで表現する制御手法を採用していた。さまざまな環境下でスムーズな変速ができるように,このパラメータをキャリブレーションする必要があり,ある程度穏やかな変速制御とする必要があった。また,ベース機種からトランスミッション諸元やエンジンの変更がある場合,ベース機種のソフトウェアを流用すると諸元やトルク特性の違いから変速性能(変速の滑らかさ)にバラつきが発生してしまう。この性能バラつきを吸収するため,実車による車種適合が必要であった。SKYACTIV-DRIVEでは,製品ごとに生じる性能バラつきを補償する技術を導入し,ハードウェア面の精度向上を実現した。定量的な物理特性に基づく次世代モデルベース技術を制御ソフトウェアに導入することで,トランスミッション内部状態を推定し,高精度かつ高速な変速制御を実現した。ベース機種からトランスミッション諸元やエンジン特性が変更される機種開発においても,物理特性に基づいた次世代モデルベース技術により,トランスミッション諸元などを設定し直すことで,最小限のキャリブレーションによる車両適合を可能とした。6.1変速制御の高精度,高速化一般的な有段位トランスミッションでは,入出力軸の回転数を制御パラメータとして,内部クラッチを油圧制御して変速制御を行う。各ギヤ段は複数あるクラッチを締結する組み合わせで決定されるため,変速制御中は,各クラッチを適切なタイミングで締結及び解放を切り替える必要がある。従来機種では,入出力軸の回転数変動と油圧スイッチの状態を基にクラッチの締結や解放状態を制御していた。締結や解放を行っている過渡状態では,回転数変動が少なくなる期間があり,上記の情報だけではクラッチの締結あるいは解放状態を正確に推定できない。そのため,あらゆる状況下でスムーズな変速を実現させるには,各クラッチの動作タイミングに若干の余裕を持たせ,緩やかに締結する必要があり,変速制御の応答性が抑制されていた。SKYACTIV-DRIVEでは,トリミングと呼ぶトランスミッションの固体ごとに性能補償する技術を導入すると共に,モデルベース技術に基づく仮想油圧回路モデルをTCMソフトウェア内に織り込んでいる。この油圧回路モデルにより,リアルタイムにクラッチや油圧回路中のバルブの動作状態を推定することが可能と―83―