ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
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マツダ技報 2015 No.32
マツダ技報No.32(2015)が創られてきた。日本では大半の大人は家族が出来たら,クルマを家族の移動手段に変えてしまう。「私は家族がいるから・・・」大人は子どもたちのためだと言っているが,そこに子どもたちの憧れはなく,次第にそれがクルマであることすら忘れていくのである。その移動手段が街に溢れ,日本の風景は殺風景なものになってしまった。我々大人はこの罪を認め,クルマ本来の魅力を取り戻すべきである。車は本来かっこいいものである。心動かすマシン,道具だと思う。少なしマツダはその美しい道具を提供するブランドだと思っている。「クルマはアート」というテーマで広島県立美術館で展示会を行った。商業デザインという域を超えて,アートというレベルに達したいというメッセージを提唱し,我々がクルマのデザインに掛ける思いを訴求した。根底には広島を文化レベルの高い芸術の街にしたい,という思いもある。これが,大切なマツダの故郷広島に対する恩返しにならないか?とも思っている。その県立美術館で同時開催していたのは「榮久庵憲司の世界展」だった。彼は日本のインダストリアルデザインの第一人者,広島出身のデザイナーである。日本のインダストリアルデザインは広島がそのルーツであるとも言える。彼が提唱しているのは「道具論」。道具に魂が宿るという日本古来のモノ創りの精神であり,モノ創りに対する思いは同じだと感じている。広島から世界に向けて日本のデザインの素晴らしさを発信していけたらとも思う。この展示会はその一歩である。デザインは,古臭いものは駄目だが,思想なくただ新しいだけのものはもっと価値がないと思う。過去を理解しその上に進化を重ね,飛び抜けた価値を創る。それを熟成し時間を掛けて伝統に繋げる。それがブランドに繋がっていく。気が遠くなるような時間を要するかもしれないが,継承する強い意志と,それを継承していける人材が居ないと実現できないのがブランドだと思う。マツダは今そのブランドを築くため,大きな挑戦を行う大事なステージに居る。今しかない!と感じている。わたしは建築を見るのが好きで色んな場所に出掛けるのだが,これまで見たなかで最も心を動かされたのは,バルセロナの教会サグラダ・ファミリアだった。19世紀末に着工していまも工事中。その建築を設計した建築家(アーティスト)ガウディは自分の遺志を継ぐ後輩設計者に仕事を託し,自分の人生を超えてゴールを定めた。その設計思想を受け継いだ後輩たちによって100年の時をかけて今日も完成を目指して築かれている。建築物としてのスケールの大きさはもとより,その壮大な時間のとらえ方にも心を動かされた。壮大な戦略である。我々もこのくらいの壮大な計画のもと,執念を持ってブランド構築を図っていく必要があると思う。マツダブランドがプレミアムな価値を持ち,世界中のクルマ好きから尊敬されるブランドになり,大人のクルマ文化を創れるブランドになる。これが私の夢であり,マツダブランドとして目指す目標だと考えている。2020年にマツダは100周年を迎える。あと5年余りでその目標に到達するとは思っていないが,それまでに我々が,後輩たちに託せる大きな「夢」への礎を創り上げたいと思っている。―2―