ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

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概要

マツダ技報 2015 No.32

マツダ技報No.32(2015)の立体的なフォルムとして昇華することを目指した。クレイモデラーの職人技が生み出す,思わず触れてみたくなる精妙な曲面変化と,美しいリフレクションを持つボディーを,工業製品とアートとの融合を希求する「魂動」デザインの真骨頂として高い完成度で具現化した(Fig. 9)。それに加えて,日本文化の土壌が育んだ,書道や武道にも通じる「力の集中と拡散」のリズムの美しさを,クルマのボディーに表現することにも挑んだ。ヘッドランプからフロントフェンダーを経て後方へと向かう特徴的なキャラクターは,フロントフェンダーピークでいったん集約され,そこから拡散しながらリヤフェンダーに至り,そこで反転して駆け上がると,リヤフェンダーピークで再び集約されたあと,クルマの後方へ拡散しながら一気に抜けて行く。この表現には,筆を操りながら力とスピードによって線の太さや質感をコントロールし,力の「ため」と「抜け」によって,一つのグラフィックを創り出す,東洋の「書」の精神を反映させた。西洋の美意識とは異なる,日本独特の美学の神秘性をボディー造形に込め,「魂動」デザインの新たな可能性を表現したものである(Fig. 10)。いた。フロントノーズに関しては,SKYACTIVパワートレイン採用によるエンジン搭載位置の後退や,アクティブボンネットが可能にした歩行者保護性能等の向上によって,高さそのものを低く抑えることができた。しかし最大の難関はヘッドランプユニットの格納である。その解決策として,十分な発光量を持ちながら,光源の発熱量が小さく,ユニットをコンパクトに作れるLEDを採用した。その結果,前述の低く短いオーバーハングが実現し,また小さいスペースで成立できるように,ランプ外形を薄くスリークな形状にした。また,ランプの奥にはペスと呼ばれるプロジェクターランプユニットがあるが,それを「眼球」に見立てて全体をデザインした。見る角度によって目の奥の「瞳」が表情を変える,印象的な顔立ちを造ることができた。これは,初代ロードスターのリトラクタブルヘッドライトが持っていた,表情を変える「目」からヒントを得たもので,オーナーに深い愛情を持って迎えられることを願ってデザインした(Fig. 11)。マツダの新世代商品に共通のシグネチャーウイング(Fig. 12)は,アッパーグリルを持たないスポーツカーでは省略し,そのニュアンスのみを,ヘッドランプへ走るバンパー上のシャープなキャラクターラインと,ランプユニット内側で点灯するLEDポジションランプの発光ラインによって形造り,シンプルなブランド表現にした。またバンパーコーナー部には,海外向けにデイタイムランニングランプとなるLEDの補助ランプを「ハ」の字型に配し,安定感のあるスタンスを強調した(Fig. 13)。Fig. 9 Alluring Body SurfaceFig. 11 Lamp DesignFig. 10 Rhythm of Tense and Speed3.4フロントデザイン前述のプロポーションモデルを活用したデザインスタディの結果,美しくバランスの取れたプロポーションを実現するためには,フロントオーバーハング部分を極限まで切り詰め,低く短く作ることがポイントであると分かってFig. 12 Signature Wing-102-