ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

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概要

マツダ技報 2015 No.32

No.32(2015)マツダ技報(1)6速直結構造6速ギヤをギヤ比1.000直結とすることで,チェンジロッド上の反転機構が不要となり,軽量となる上,チェンジリンク効率の高いダイレクトフィールを向上させた。(2)インプットリダクションギヤ比の低速化オイル攪拌抵抗低減,トランスミッションに入力されるエンジンの回転変動低減によるラトル音低減にも貢献した背反機能のブレークスルーである。このキー技術で軽量化,静粛性と高効率化の両立を実現できた。(3)シンクロの全段メイン軸配置チェンジリンク構造のカウンタ軸上へつなぐ部品が不要なため,リンク効率向上と軽量化。また,カウンタ軸の攪拌抵抗の低減も実現し,高効率に貢献できた。(4)低温時低粘度オイル冬季,ミッションオイル温度低下により,オイルの粘度が上がることで,シフトが入りにくいシーンがあり,これを払拭するため,新たに低温時低粘度オイルを開発した。攪拌抵抗低減とともに,季節変動に左右されないチェンジフィールを実現した。ユニット抵抗は現行ロードスターの6速マニュアルトランスミッションと比較して約30%低減した。ユニット抵抗をFig. 5に示す。Previous model (6MT)Fig. 5 Comparison Loss Torqueはアルミダイカストの生産課題であったが,生産サイドのサポートで商品化を実現できた。ハウジングの設計手順を以下に示す。①ハウジング存在可能空間の定義ハウジング輪郭と関連するレイアウト要件から定義した。主な項目は下記のとおりである。(ⅰ)フロントミッドシップレイアウト(ⅱ)乗員ヒップポイントを低く中央に配置する。(ⅲ)ドライバの下半身が車両前方にまっすぐ向くようにペダル位置を改善する。トランスミッションハウジングのスリム化は,新型ロードスターのコンセプトの重要な要件に貢献できた。②ハウジングコンセプト設計下記項目を満足できる形状と肉厚を決定した。(ⅰ)ひずみエネルギの最小化(ⅱ)基本剛性確保③基本機能設計基本形状,肉厚をベースに下記項目を設計した。(ⅰ)潤滑性能(ⅱ)合わせ面のシール性と強度④製品仕様の決定NVHに関する項目を満足できる仕様を適用して最終製品形状を決定した。(ⅰ)伝達特性(ⅱ)共振応力発生回避(ⅲ)増幅および放射特性設計手順の中でポイントとなった領域を次に紹介する。ハウジング形状の成り立ちは,位相最適検討で必要最小限の柱,壁,外殻を定義した後,製品化する上での制約条件を必要最小質量で満足し,形状を決定した(Fig. 6)。これらのキー技術とSKYACTIV技術の融合で新型ロードスター用の6速マニュアルトランスミッションは誕生した。次にプロセス革新事例を紹介する。(1)軽量と高剛性を両立したハウジングトランスミッションへの入力負荷とシンクロ同期容量から軸間距離を決定,初代のカチッと決まるチェンジを守るために,シャフト及びロッドの軸受け配置は初代を踏襲した。初代の伝統を守るために変えなければならないこと,変えてはならないことを決めて開発を進めた。ハウジング輪郭は内部の構造体にギリギリ沿うように,オイル整流も加味して描いた。SKYACTIV-MTのケース開発プロセス(1)を進化させ,従来の均一肉厚という考え方を適用せず,強度,剛性,NVH性能から最小限必要な厚みを必要な部位のみに肉厚としてのせた。エンジンと接続するトランスミッションケースは外リブを立てないことで,高剛性とスリムなボディシェイプを両立させた。均一ではない薄肉厚Fig. 6 Transmission Housing Optimization潤滑性能確保のためのハウジング内壁形状については,トランスミッション内部は空気とオイルの2相状態であり,粒子法や差分法による数値計算のみで造り込むにはCAEでは十分でなく,透明ハウジングを作製し,油の流れを可視化した。攪拌抵抗が小さく,ねらいの油流れになるように,内壁形状を決定した(Fig. 7)。-121-