ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
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マツダ技報 2015 No.32
No.32(2015)マツダ技報からなる。これらの現象には,起振力を発生するエンジン,トランスミッション等の他,発生した力を伝達するマウント,吸排気系,駆動系,サスペンション,伝達された力を受けて乗員が感知する振動騒音を発生するボデー等,すべての車両構成要素が関与する。そしてこれらの関連要素は,強い相互作用を及ぼしあいながら複雑に応答する。例えば,高い変速段における低回転域のこもり音では,エンジンのトルク変動がフライホイール,トランスミッション,クラッチダンパ,ドライブシャフト,等で構成される駆動系のねじり振動を励起し,この振動が更にエンジン,リアデフ,PPF(Power PlantFrame),マウントで構成される振動系と連成して車体に入力される。そして車体に入力された振動は,更にボデーシェル,各種のふた物,車室内空洞の共鳴等と連成して乗員位置の音や振動となる。このようにPT NVHは,関連する要素が一体の系として相互に影響しあうため,本稿では特にPTシステムNVHと呼ぶ(Fig. 1)。に早い段階では,市場におけるさまざまな使われ方の模擬による性能要求の把握にもCAEを活用している。一方開発後期には,詳細なプラントモデルと制御モデルによる制御パラメタのキャリブレーションへの適用も行っている。このように,マツダにおける開発の机上化は,単に実機試験をシミュレーションに置き換えることによる効率化にとどまらず,CAEの全面活用による詳細設計,構想設計,制御設計,生産品質開発,更には市場要求性能の把握にまで広範囲に及んでいる(Fig. 2)。マツダでは,一般的には制御のシステム設計として使われることが多い“MBD”の語を,上記のような車両設計における初期のシステム設計から構造設計,制御のパラメタ設計等まで含めた広い概念ととらえている。以後,PTシステムNVHの設計を,MBDプロセスに則って新型ロードスターの開発に適用した例を紹介する。MBD ApplicationAreaFig. 2 MBD Application Area3.新型ロードスターのPTシステムNVHの課題に対するMBDの適用Fig. 1 PT System NVH2.2マツダのMBDPTシステムNVHは,前述のとおり多くの要素の相互作用を伴うため,NVH性能向上のためにはこれらの要素を一体のものとして同時に最適化しなくてはならない。また関連要素が広いことから影響をあたえる性能も幅広く,加速応答,操縦安定性,乗り心地,燃費等もNVHと同時に最適設計する必要がある。当社では,1990年代に開始したMDI(Mazda DigitalInnovation)の活動をはじめとして早くから,旧来の実験に基づく試行錯誤開発から机上開発による合理的かつ効率的な開発への移行に取り組んできた。最適設計の対象は,古くはユニットの局部的な構造の設計パラメタ最適が中心であった。しかし近年ではモデルの大規模・高精度化に伴い,開発初期段階でのPTシステムNVHの最適化,また更3.1 PTシステムNVH性能の開発課題一般的にPTシステムNVH性能は,走り,燃費性能と相反する。したがって,走り,燃費性能の劇的な向上を目標に掲げる新型ロードスターにとっても,これらの諸性能を高いレベルでバランスさせることが大きな課題であった。例えば,走り性能,燃費性能の向上のための低速トルク向上やATのロックアップ範囲拡大は,こもり音の起振力となるエンジントルク変動を増大させる。アイドリング時の燃費改善のためのエンジン低回転化や,操縦安定性の向上などからのPTマウントの高剛性化はPTシステム共振周波数とエンジン回転の近接をまねくため,車体振動を悪化させる。また,車両の軽量化,例えばPTケースやボデーパネルの薄肉化,遮音材の削減は,振動応答や音響特性の増加を通じて車内音を悪化させる。3.2 MBDによる課題解決へのアプローチ走り,燃費性能,NVH性能は,PTマウントシステムや部品構造に大きく影響される。特にPTのマウントシステムは車両の基本骨格を大きく左右するため,実機のない段-129-