ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

ページ
185/306

このページは マツダ技報 2015 No.32 の電子ブックに掲載されている185ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

マツダ技報 2015 No.32

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

マツダ技報 2015 No.32

マツダ技報No.32(2015)として組み直すことで,機能的なブラックボックスを排除した。この結果,マツダだけの力で技術開発用ECUの機能を自在に変更・追加できるようになり,また,この過程で次のようなスキルも獲得することができた。(1)最適な電子部品の選定能力処理負荷,入出力機能,耐環境性能から選択可能なマイコンなどの部品を選定する能力が身についた。この能力は,今後の量産開発で,適切なコスト低減を図りつつ品質を高めるために活用ができる。(2)回路設計検証技術の獲得電子回路CADを使っての基板設計やSPICE(SimulationProgram with Integrated Circuit Emphasis)などの回路解析技術の獲得ができた。これにより,回路構成を考える段階から,基板上の部品配置や配線パターンの形状や取り回し,それらが性能や信頼性に与える影響をイメージしながら設計することが可能となった。これにより,商品版ECUを見たときにも品質やコストの審査が可能となる。3.3ハードウェア信頼性開発力の内部留保技術開発用ECUは,民生品に比べて熱や振動など,はるかに過酷な環境条件で使われ,しかも高い精度が要求される。また,1枚の基板上にマイコン,デジタル回路,小信号回路,高電流・高発熱回路などが混在して互いに干渉し合う。上述の機能開発で得られた回路図は,あくまで理想状態であり,これを元にFig. 8のような基板を設計する際は,種々信頼性に対して設計結果を検証しながら進めていく必要がある。今回は中でも技術難度が高く,ブラックボックス化していた,熱,電磁ノイズ,振動について,解析技術の取り組みを紹介する。信頼性開発も機能開発と同様に,実機で起こる技術的な問題及び検証の難しさを経験した上で,それらをイメージしながら,左バンクでやり切れるようになる姿を目指した取り組みとした。(1)熱解析一般的に,解析ツールは解析対象の設計スペックなどから得たデータを入力しただけでは,予実差が大きく目標の精度が得られない。そこで,まず実基板各部の温度を測定する技術を修得するところから始め,予実差の検証ができる状態とした。その上で,熱解析モデルの精度向上と,発熱量予測精度の向上に取り組み,目標の精度達成に目処を付けた。1)熱解析モデルの精度向上熱解析モデルの対象デバイス内部構造の重要なパラメータのみを詳細にモデル化することで精度向上につなげた。また,リグ評価基板を製作して専用の同定装置により熱構造関数の合わせ込みを実施するやり方で,許容できる誤差範囲内で解析可能な,熱解析モデルを得ることができた。このようにして得た各デバイスの熱解析モデルを基板の熱解析モデルと結合し,部品が実装された基板全体の熱解析を,目標の精度で実施することを可能にした(Fig. 9)。Measured by Thermo Viewer Simulated by Analysis ToolFig. 9 Thermal AnalysisFig. 8 Printed Circuit Board Design基板上では,部品配置や回路パターンに依存して,回路の性能や安定性,発熱信頼性,電磁ノイズ,耐振性などが,同時に変化する。これを勘と経験,定性的な解析,人手による計算のみで検証するのは困難である。このため,開発対象と環境をモデル化した上で,回路解析,熱解析,電磁ノイズ解析,振動解析などによる検証技術が必須となる。2)発熱量予測精度の向上解析時に入力する発熱量の精度を向上させるため,回路解析技術を組み合わせ,ソフトウェアでの動きを考慮した対象デバイスの作動状態で回路解析を行い,熱解析の発熱量を算出する。今後,技術開発用ECUの搭載要件や小型化でますます厳しくなる熱環境に対応するためにも,更なる精度向上を目指したい。(2)電磁ノイズ解析特に,EMC(Electronic Magnetic Compatibility)においては,多層基板上に数千もある配線やパターン形状のひとつひとつが電磁ノイズに関連し,相互に影響し合う。このため複雑な解析が必要となる。回路図では説明できない潜在的な裏のからくりが存在す-176-