ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

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概要

マツダ技報 2015 No.32

マツダ技報No.32(2015)(2)ソフトウェアPF詳細設計ソフトウェアPF構想に基づき,個々のソフトウェア・コンポーネントの詳細設計を行った。ここでは,その事例を2つ紹介する。1)燃料噴射・点火タイミング処理エンジン制御では,アプリケーション層からの燃料噴射及び点火要求をクランク角に同期して緻密に制御することが要求される。そのため,プラットフォーム層では,マイコンの高度なタイマ機能を用いて,緻密なタイミング制御を実現した。具体的には,クランク角信号からエンジンの回転角度位置を示すアングルクロックを生成し,これをコンペアマッチタイマのクロックソースとすることで,CPUの負荷を最小限に抑えながら,正確な燃料噴射及び点火タイミング制御を実現することができた。2)デジタル信号処理エンジン制御では,エンジンの燃焼状態をセンサで検知し,最適な燃焼状態となるようフィードバック制御しており,センサの電気信号からノイズ成分を除去し,特定の信号成分のみを正確に抽出することが要求される。そのため,プラットフォーム層では,センサ信号を高速にAD変換し,デジタルフィルタ処理を行うことで,簡易なアナログフィルタのみで,高次のアクティブフィルタを実現した(Fig.12)。MicrocontrollerInput SignalAnalog AAF (e.g., 80KHz Low Pass Filter)High-Speed ADC (e.g., 160KHz ADC Sampling)Digital AAF (e.g., 20KHz IIR Filter)Decimation (e.g., 40KHz Down Sampling)Filtered SignalFig. 12 Digital Anti-Aliasing Filter(AAF)3.6ソフトウェア開発環境の構築組込みソフトウェアを開発するための統合開発環境を構築すると共に,ソフトウェア品質を検証するための静的・動的解析ツールを導入した。(1)自動コード生成環境の構築アプリケーション層は,Simulinkを用いて実行可能な制御モデルとして記述している。そのため,オートコード・ジェネレータを用いて,制御モデルから組込みC言語ソフトウェアを自動生成する環境を構築した。これにより,組込みソフトウェア品質の安定と開発期間の短縮を図った。(2)ソフトウェア統合開発環境の構築実マイコン上で動作するソフトウェアを開発するため,C言語コードのコンパイル,アセンブリ言語コードのアセンブル,出力されたオブジェクトコードのリンクといった一連のビルド環境を構築した。また,マイコンのオンチップ・デバッグ・インターフェイスを用いて,ソフトウェアを検証するテスト環境を構築した。これらのツール群をシームレスに結合させることにより,組込みソフトウェア開発の効率化を図った(Fig. 13)。Control ModelModeling ToolAuto CodeAutocode GeneratorExecutable FileCompiler / LinkerTP-ECUHand CodeEditorTrace InformationDebuggerFig. 13 Software Development Environment(3)ソフトウェア品質検証環境の構築ソフトウェアの品質を確保するには,網羅的なテストとレビューが重要であるが,大規模・複雑化するソフトウェアのテストやレビューの全てを人手に頼ることは困難である。そのため,ソースコードを静的に解析し欠陥を検出する静的解析ツールを導入して,ソフトウェアの信頼性・保守性・移植性の向上を図った。また,テストシナリオの作成を支援し,テストカバレッジを評価するカバレッジ計測ツールを導入して,テストの効率化と網羅性の向上を図った。4.成果技術開発用ECUの開発を通じて以下の成果を得た。(1)ECUハードウェア領域半導体部品選定から始まり,基板設計CADを用いた設計技術獲得,信頼性などをCAE解析する技術が獲得できた。これにより,商品版ECUについての適切な仕様設計が上流で可能になる。(2)ECUソフトウェア領域従来からアプリケーション層については,モデルベース開発を実践し,図面を出す前にクルマモデルとの接続検証を終えていたが,それに加えて,プラットフォーム層のソフトウェア開発力も学び,エンジン制御の全ソフトウェアについての技術が獲得できた。(3)プロセス領域上記ホワイトボックス化された技術開発用ECUを用いた制御システムの先行技術開発が可能となった。(4)人材領域電装品メーカ様の高い技術力をもつエンジニアの方と,このレベルの技術について共創できるエンジニアが社内に育ったことは大きな成果であった。-178-