ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
- ページ
- 191/306
このページは マツダ技報 2015 No.32 の電子ブックに掲載されている191ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは マツダ技報 2015 No.32 の電子ブックに掲載されている191ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
マツダ技報 2015 No.32
マツダ技報No.32(2015)充電時でも低温でのわずかな低下に留まった。低温時の充電においてもリチウムイオン電池で懸念されるリチウム析出のような安全性に直結する心配は全くないため,低温での大電流の受け入れにも適している。3.劣化メカニズムキャパシタの蓄電原理から劣化=静電容量が減少とは,活性炭表面へのイオンの物理吸着能力が低下することである。この原理原則に従い,新品と劣化品のキャパシタを用いてイオンの物理吸着に寄与する活性炭と電解液の物性と電極について分析を実施し,化学的および物理的な変化について解析を試みた。Fig. 5 Temperature Dependence of the Capacitance2.3長寿命特性キャパシタは比較的温和な条件下では劣化がほとんど進行せず,数百万サイクルという長期間の寿命を有している。しかし,高温・高電圧といった高負荷状態では,容量減少や抵抗増加といった劣化が進行する。キャパシタは電気二重層と呼ばれる活物質=活性炭表面にイオンが吸着されることで静電容量=キャパシタンスを発現することから,この吸着が阻害されると劣化が進行することになると考えられる。前途のとおり,車両の使われ方はユーザによって変わるため,キャパシタも世界中のさまざまなユーザに対応できる寿命特性を有しておく必要があるため,高負荷状態で運用されることを想定した,セル温度70℃で充電200A,放電50Aを繰り返したサイクル特性の結果をFig. 6に示す。これはマツダで定める24万キロ相当の走行距離に相当し,温度は砂漠地帯でのエンジンルーム内温度を想定したものである。この過酷な試験に対して,キャパシタは約85%という高い容量維持率であった。3.1活性炭Fig. 7に高負荷状態に長時間放置したキャパシタの放電カーブを示す。初期状態と比較して容量維持率約80%,抵抗上昇率約100%となった。容量維持率約80%ということはキャパシタの容量発現メカニズムからイオンの吸着能力が約20%低下したと推定することができる。このイオンの吸着サイトが活性炭表面に着目して,正負極それぞれの比表面積を評価した。Fig. 8に結果を示す。劣化状態の活性炭の比表面積は初期状態と比較して,正極で約30%,負極で約10%低下していることが分かった。Fig. 9にこの活性炭の細孔分布を示す。比表面積低下に伴う細孔体積の低下がみられるが,細孔の分布形状はほとんど変化していないことから,この比表面積の変化量はイオンの吸着サイト数の変化量と推定できる。つまり,静電容量に寄与するイオンの吸着サイト数は正極で30%,負極で10%低下したこととなる。吸着サイト数の減少は各電極のキャパシタンスの減少と同一であるから,Table 1よりセルとしてのキャパシタンス減少率を算出すると,約20%となり,Fig.7で示した実測での容量減少率と一致した。よって,容量低下の主要因は比表面積の低下が主要因であると考えられる。CapacityDegradationFig. 7 Discharge Profiles of the Capacitor underAccelerated Aging at 25℃Fig. 6 Discharge Capacity Retention by the Cycle Test-182-