ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

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概要

マツダ技報 2015 No.32

マツダ技報No.32(2015)バッテリ開発を行う上で最も時間がかかるのは,寿命信頼性である。寿命信頼性評価は,一般的に,バッテリの劣化に影響度が大きい劣化因子(例えば,温度,電圧,電流など)を加速させることで,短期間で評価(加速劣化試験)する方法がとられている。しかし,複数の市場の使われ方での寿命検証を行うためには,膨大な試験数が必要となる。一方,バッテリは日進月歩で進化しており,材料系(リチウムイオン電池の場合:三元系,Fe系,Mn系,Liリッチ系など)の違い,原理(鉛蓄電池,キャパシタ,ニッケル水素電池,リチウムイオン電池)の違いなど検討すべきバッテリは多岐にわたる。これら複数のバッテリを比較検討するためには,膨大な時間を要してしまう。これら課題の解決には,モデルを用いることが効果的であり,机上検証による短時間検証及び複数条件での同時評価を可能とし,実車評価を減らすことで効率的にバッテリ開発を進めることが期待できる。そこで,簡便でありながら,原理原則やメカニズムに基づきバッテリの状態を再現できるモデル作成が求められる。そのためには,各バッテリの充放電挙動や劣化挙動において,その挙動のメカニズムが共通の部分と非共通の部分を明確にし,共通部分をベースとしたモデル化ができれば,汎用性のあるモデル化技術を構築できると考えた。本稿では,モデルベース開発を進める上で必要なモデル化において,考え方や作成方法について紹介する。ここで,バッテリ挙動のモデル化について説明する。車の使われ方は,走行と駐車に大別される。走行時は,バッテリは充放電状態であり,これにより発熱し劣化が進行するので,充放電モデル,温度モデルと劣化モデルが必要となる。駐車時は,バッテリは保存状態であり,保存により劣化が進行するので劣化モデルが必要となる。このように,バッテリの挙動は,3種のモデルによって表現することができる。今回は,充放電モデルと劣化モデルについて紹介する。3.充放電モデル3.1充放電モデルの考え方バッテリの充放電挙動のモデル化に関して,バッテリの充放電メカニズムから考える(Fig. 1)。例えば,リチウムイオン電池では,充電時において正極の結晶内のLiは,正極から脱離し(正極反応),電解液内に移動する。一方負極では,電解液内を拡散したLiイオンが,溶媒と混ざり合っている溶媒和した状態から脱溶媒和を行いながら負極内に挿入(負極反応)する。これら充電メカニズムで,正極及び負極反応はバッテリの種類によって異なるが,イオンの拡散を伴う充放電メカニズムを有しているバッテリでは,拡散現象は共通で考えることができる。つまり,イオンの拡散をモデル化できれば,共通の充放電モデルを作成することができると考える。ここで,イオンの拡散は,電解液中を拡散する場合や正極や負極の結晶格子内を拡散する場合などがあり,これらを総じてイオン拡散と定義した。Fig. 1 Battery Charge Mechanismイオン拡散のモデル化について,一般的に拡散モデルと等価回路モデルの二つの物理モデルがある。拡散モデルは,拡散方程式を用いたものであるが,車載を想定した場合,計算量が多く実装性に課題があると考えた。一方,Fig. 2に示す等価回路(抵抗とコンデンサで構成されたRC回路)は,他のデバイスでも使用されている一般的なプラントモデルであり,マツダにおいても鉛バッテリにおいて初めて適用した(1)。そこで,他のバッテリに関してもRCモデルの適用を検討した。(a)One RC Circuit Model (b) Two RC Circuit ModelFig. 2 RC Circuit Modelリチウムイオン電池の充電時の電圧挙動をFig. 3に示す。この結果から,1段RC(以下1RC)よりも2段RC(以下Fig. 3 Battery Voltage Behavior in Charge-186-