ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

ページ
212/306

このページは マツダ技報 2015 No.32 の電子ブックに掲載されている212ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

マツダ技報 2015 No.32

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

マツダ技報 2015 No.32

No.32(2015)マツダ技報論文・解説36エンジンの省燃費を支えるトライボロジ解析技術Tribology Analysis Technology Supports Engine Fuel Economy栗栖徹*1*2木村昇平*3白井裕久Toru KurisuShohei KimuraHirohisa Shirai菅近直範*4Naonori Kanchika要約エンジンの燃費改善において,機械摩擦抵抗の低減は,重要な課題である。SKYACTIV技術の開発においても,エンジンの燃費改善のために設定した制御因子のうちの一つであり,高い目標をかかげ,その低減に取り組んだ。機械摩擦抵抗低減には,さまざまな運転条件での潤滑状態を把握し,潤滑油消費をはじめ関連する信頼性やNV性能を損なうことなく油膜をコントロールすることが重要である。そのために,マツダでは,トライボロジ領域へのCAE活用を積極的に進めており,流体潤滑理論や弾性流体潤滑理論を基に内製したシミュレーションプログラムをはじめ,高機能の市販アプリケーションソフトなど種々の解析ソフトを駆使して潤滑メカニズムの解明や潤滑状態の最適化に活用している。本稿では,エンジンのさまざまなトライボロジ解析技術を紹介するとともに,それらをどのように活用してエンジンの燃費低減に結びつけたか紹介する。SummaryReduction in the friction loss of Internal Combustion Engine (ICE) is a key for fuel efficiency. In theSKYACTIV TECHNOLOGY development, this was one of the seven control factors established for theimprovement in fuel efficiency, which was addressed with a high target. To reduce the machine frictionloss, recognizing the lubrication status at various driving conditions, and controlling oil films withoutruining NVH performance, reliability of lubricant consumption and others is important. For that purpose,Mazda has been promoting the application of CAE to tribology areas. Clarifications of lubrication mechanismsand optimization of lubrication status are performed by various analysis softwares such as highfunction applications on the markets and internaly-made simulation programs based on fluid lubricanttheory and elastohydrodynamic lubrication theory. This paper introduces various tlyporogy analysistechnologies of engin and how to use them for the reduction in fuel cunsumption of the SKYACTIV engine.1.はじめに近年,省燃費の観点からハイブリッド車や電気自動車など自動車の動力源としてモータの採用が急速に増加してきている。エンジンは,比出力の高さや経済性などその優れた特性から20世紀の初頭から自動車の動力源の大半を占めてきた。2020年時点においてもグローバル市場における主要な動力源として,使われ続けると考えられる。したがって,自動車の燃費を支配するエンジンには,一層の燃費率の向上が必要で,特に実用走行において寄与の大きい摩擦抵抗損失低減への期待が大である。自動車のエンジンは,その内部で燃料を燃やし,発生する熱を運動エネルギに変換する内燃機関である。内燃機関はFig. 1に示すように,燃焼によって発生する熱エネルギの大部分が排気損失,冷却損失,ポンピング損失,機械抵抗損失として捨てられている。自動車を走らせる仕事として有効に活用できているエネルギは,これまでは最大でも3割程度であった。内燃機関の熱効率改善には,これらの損失を低減し,有効仕事の割合を高めることが必要である。そのために制*1~3エンジン性能開発部4パワートレイン技術開発部Engine Performance Development Dept.Powertrain Technology Development Dept.-203-