ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
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マツダ技報 2015 No.32
No.32(2015)マツダ技報(1)ピストンスカートピストンスカートは,ピストン往復動における首振り挙動を安定させ,姿勢変化時のライナへの衝突を緩和してピストンスラップと呼ばれる冷間時の衝撃音をはじめ,焼き付きや摩耗を抑止したうえで,摩擦抵抗を最小化するすべり面形状(プロフィール)にすることが必要である。Fig.4は,最適化プログラムとピストンの潤滑挙動解析プログラムを組み合わせて,それらの特性をバランスさせた最適なスカートプロフィール形状を設定した例である。(2)ピストンリングピストンリングは,摩擦低減の観点から,薄幅化や張力低減が進められてきている。しかしながら,張力を下げると潤滑油消費の増大につながりやすく,個々のエンジンの潤滑油消費メカニズムに適った方法で張力を下げる必要がある。ピストンリングが関係する潤滑油消費のメカニズムには,①トップリングがシリンダライナ表面にかき残した油膜が高温の燃焼ガスにさらされて蒸発するもの,②トップリング合口部から燃焼室への吹き返しガスに乗って運ばれるもの,③トップリング摺動面とライナとの間にできたすきまから燃焼室へのガスの吹き返しに乗って運ばれるもの,④トップリングの背面を通って燃焼室に運ばれるもの,⑤トップリングによってかき上げられるもの,がある。これらを全て切り分けて定量的に予測することは困難であるが,ガスの流れや油膜厚さを計算することによって,ある程度潤滑油消費の良し悪しを予測することが可能である。Fig. 6は,セカンドランド圧力の計算結果を実測と比較した事例である。この解析に用いたシミュレーションでは,モデルの改良によってそれまで実測と合っていなかったランド圧力の予測精度が大幅に向上し,リング部からのガス流れを精度よく求めることが可能になった。Fig. 4 Optimization of Piston Skirt Profileこの解析では,数百通りのプロフィール形状について摩擦損失や衝突エネルギを計算し,その中から最もバランスのとれた形状を選択することによって,スカートの局所で生じやすい強い当たりを緩和し,境界潤滑状態あるいは金属接触を防ぐことによって,摩耗や焼き付きを防止するとともに,摩擦損失を低減した(Fig. 5)。Fig. 6 Comparison of Second Land Pressurea) Before Optimization b) After OptimizationBefore OptimizationAfter Optimizationc) Friction Calculation ResultFig. 5 Improvement of Piston Skirt ProfileSKYACTIV-Gガソリンエンジン, SKYACTIV-Dディーゼルエンジンでは,このモデルを用いてリングの合口寸法やランド部の形状検討を行い,燃焼室へのガスの吹き返しを抑え,潤滑油消費が少ない仕様を設定することができた。Fig. 7は,先行するリングによる油膜のかき残しを考慮して各リングの油膜厚さMOFT(Minimum Oil FilmThickness)を計算した事例である(3)。これまでの解析は,先行リングのかき残しの考慮が不十分であり,リングのオイル掻き作用が十分評価できなかった。このようなより実際に近いモデルを使った計算を駆使することによって摩擦抵抗と潤滑油消費の観点から各リングの作用を明らかにし,リング摺動面プロファイルを最適化するとともに張力を最小化した。-205-