ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

マツダ技報No.32(2015)論文・解説37リアルワールドでの安全性向上に向けた取り組みOur Activities for the Real-World Safety Enhancement神本一朗*1河口健二*2吉村美枝*3Ichiro Kamimoto Kenji Kawaguchi Mie Yoshimura宮島陽一*4柴原多衛*5成川岳宏*6Yoichi Miyajima Taei Shibahara Takahiro Narikawa要約日本政府の目標「2030年世界一安全で円滑な道路交通社会」を達成するため,政府,県警など地方自治体,各自動車メーカなどはさまざまな努力をしている。本稿では,交通事故時の傷害低減のマツダの取り組みについて,リアルワールドでの事故の統計分析から,ミクロ事故データを用いての個別の事故の再現と対策検討までの一連のプロセスを解説する。また,具体例として,前面衝突時の後席高齢者乗員の傷害を取り上げ,車両挙動と乗員挙動の事故再現や,傷害に影響する要因を分析,傷害低減のための知見を得ることができた。SummaryIn order to achieve the Japanese government’s target,“The safest and smoothest road traffic society inthe world by 2030”, various efforts have been made by the local and central governments, automotivemanufacturers and others. This paper introduces Mazda’s efforts including a comprehensive accident researchcovering from statistical analyses to in-depth study such as accident reconstructions and countermeasureconsiderations. In the study, rear-seating elderly occupants’injury cases at frontal collisionswere focused on, and the reproduction of vehicle and human behaviors at the accidents and the analysesof the factors affecting injuries are explained. The findings of this study provide us the hints leading tothe injury/fatality reduction from the perspective of a human body.1.はじめに日本では,法規制の強化や独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)による衝突安全性能の評価(New CarAssessment Program, NCAP)をはじめ,さまざまな研究により,より安全な自動車開発が促進されてきている。このような活動の効果もあり,交通事故による死者は2000年をピークに下がり続けており,政府は戦略市場創造プランの中で, 2030年に世界一安全で円滑な道路交通社会を実現すべく施策を検討している。このような状況の中,マツダも自動車メーカとして,お客様の事故や傷害を低減できる商品を開発してきている。SKYACTIV技術を織り込んだCX-5とアテンザは,日本の新型車の安全性能評価JNCAPでファイブスター賞を受賞するなど,各国アセスメントで高い安全性能を持つことが実証されている。NCAPは代表的な事故形態での評価で,その傷害低減効果は上がっているが,一方で,リアルワールドでのさまざまな事故形態の対応も必要で,マツダでは,NCAPモード以外の死亡重傷者等を低減することにも取り組んできている。このためには,事故実態の分析,事故件数の低減技術,事故時の乗員や歩行者の傷害低減技術などが必要である。本稿では,これまでの市場事故分析による成果と現在の傷害低減技術に関する取り組みを紹介する。2.これまでのリアルワールド分析とその成果2.1マツダ車関与事故の分析本稿で示す日本における交通事故の統計分析は,(公財)交通事故総合分析センター(ITARDA)の集計結果に基づいて行っている。2013年の事故データを用いて,マツダ車が関与した死亡重傷事故の死亡重傷当事者の状態別内訳を示したものがFig. 1で,マツダ車乗員が22%,歩行者が21%,相手四輪が18%,自転車が17%,原動機付き自転車が11%,自動二輪11%となっている。*1~6衝突性能開発部Crash Safety Development Div.-210-