ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

No.32(2015)マツダ技報3.傷害低減プロセスFig. 1 Configuration Rate of Type of Fatally andSeriously Injured Participants in Accidents Involved withMazda Passenger Car (2013)Fig. 2はマツダ車乗員の死亡重傷事故における衝突部位の比率を示している。前,右前,左前の前方三つを合算すると64%を占め,死亡重傷事故の衝突部位の中で最も多くなっていることが分かる。3.1事故分析リアルワールドでの安全性向上には,衝突被害軽減ブレーキやAT誤発進抑制機構等のActive Safety中心の事故発生率低減,エアバッグやシートベルト等のPassive Safety中心の事故時傷害低減,事故発生時の傷害予測や緊急通報等事故後の対応の三つの領域がある。本稿では事故時の傷害低減に焦点を当て,そのプロセスをFig. 3に示す。まず,市場事故の統計データや技術文献により,追突や正面衝突等の事故類型や衝突部位などの視点から,市場全体の事故の状況を見える化して対応の優先順位をつける。次に,その優先度の高い領域において,死傷事故件数の大小に影響を及ぼす因子を統計的分析により明らかにする。そして,個々の事故の詳細調査されたミクロ事故データに基づいてのミクロ事故分析を行う。具体的には,事故現場周辺に残ったブレーキ痕や車両変形状態をはじめ事故調査情報を手掛かりに,衝突の速度や角度を含む事故前後の一連の車両挙動を分析する。この車両挙動を基に,事故車両に残ったインパネやシートベルトについた傷や変形などの痕跡から,実際に発生した傷害,乗員の挙動,乗員に加わった衝撃などの傷害メカニズムを推定する。Fig. 2 Configuration Rate of Crash Area of MazdaVehicle with Fatally and Seriously Injured Occupants ofMazda Passenger Car (2013)2.2これまでの事故分析の成果前節のような状況を踏まえ,マツダは自車乗員,歩行者,相手側乗員の傷害低減に取り組んできた。例えば,前面衝突事故の脚部傷害について,フットレストやトーボードの衝突時の後退量と大腿骨荷重などの影響を定量的に明らかにしてきた(1)。この知見は,CATARC(China Automotive Technology & Research Center)でのCNCAPの基準策定に参考とされている。また,歩行者事故での死亡重傷者低減のためには,JNCAPで評価する歩行者頭部保護性能の向上が効果的であることを定量的に明らかにし(2),引き続き事故時の傷害低減に向け歩行者保護性能改善に取り組んでいる。更に,保有台数1万台当たりの歩行者死傷者数には,フロントウインドウ越しに見渡せる幅広さの指標である「見開き角」の影響があることも明らかにした(3)。見開き角の拡大は既に商品に織り込まれ,歩行者事故低減を図ってきている。Fig. 3 Injury Reduction Process3.2事故再現傷害低減策の検討のためには,前述の詳細なミクロ事故分析を実施し,実際に発生した事故をできるだけ忠実にコンピュータ上に再現し,事故や傷害のメカニズムを把握することが不可欠であり,そのための主な技術は以下の二つがある。-211-