ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

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概要

マツダ技報 2015 No.32

マツダ技報No.32(2015)(1)車両挙動シミュレーション技術事故発生時の周辺環境情報,衝突速度,衝突部位,車両諸元などの情報を基に,DSD社開発の交通事故シミュレーションソフトPC-Crash(ver.9.0)を活用して車両挙動を再現し,これで得られた車両の加速度や角速度データを(2)の人体シミュレーションに適用する。(2)人体シミュレーション技術車両挙動シミュレーション技術で再現した車両挙動データを用いて,人体の挙動や傷害の発生メカニズム検討のためにTASS社製のMADYMOヒューマンモデル(以下ヒューマンモデル)を用いた。これは,挙動に関わる人体の構造を離散化したマスと非線型の力学的特性を持つバネの集合としてFig. 4のようにモデル化されている。また,このモデルはPMHS(Post Mortem Human Surrogate,人の供試体)テストやボランティアテストによって高い人体再現性が確認されている(4),(5)。エアバッグの特性を変化させることにより,傷害変化のパラメータスタディと対策検討が可能となる。今後は,人体そのものを忠実に再現した有限要素モデルを用い,人体の骨格や内臓等の加速度や荷重,傷害を研究する活動を行うとともに,実際の傷害状況についても,事故調査データにとどまらず,救急病院や大学等とも連携して,人体挙動と人体の受傷メカニズムとの関係解明に取り組んでいく。4.前面衝突時の乗員傷害要因分析3.2で述べたプロセスに従って,前面衝突時の後席乗員の分析に取り組んだ。4.1座席別・年齢層別事故分析自車乗員の死亡重傷者数を衝突部位別に分析すると,前面衝突が大きな比率を持つことは2章で示したとおりである。ここでは更に座席別と年齢層別に分析する。男女別,65歳以上の高齢者,65歳未満の非高齢者の死亡重傷率を比較したグラフがFig. 6で,死亡重傷率は式(1)で計算される。Fig. 4 Human Structure Modeled by Lumped-massesand Springs with Non-linear Stiffnesses個別の事故再現では,性別や体格をはじめ,事故時の乗員の条件をできるだけ忠実に再現することが重要である。本検討ではミクロ事故データから得られる乗員の性別,身長,体重を入力条件として,ここから計算される人体各部のサイズと力学的特性をモデルに反映させるスケーリングの手法を用いる(6),(7),(8)。そのスケーリングの事例をFig. 5に示す。死亡重傷率(%)=死亡重傷者数/死傷者数×100 (1)男女とも,高齢者の死亡重傷率が非高齢者と比較してかなり高くなっていることが分かる。座席間の比較では,助手席の死亡重傷率が高めとなっている。175cm 76kg168cm 65kg 149cm 50kgFig. 5 Standard-Sized Model(Left) and Scaled Models(Center,Right)(3)傷害発生メカニズム解明(2)項のシミュレーションから得られる人体の挙動,人体各部の荷重,モーメント,変位等の結果から,傷害発生メカニズムが把握できれば,衝突速度,シートベルトやFig. 6 Fatal and Serious Injury Rate by Age, Genderand Seat Positionまた,男性,女性,座席ごとに,非高齢者を基準として,高齢者の死亡重傷率を示したグラフがFig. 7である。後席の高齢者の死亡重傷率が非高齢者に対して男性で4.4倍,女性で3.6倍となっており,悪化率が運転席や助手席に対して大きい。-212-