ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
- ページ
- 230/306
このページは マツダ技報 2015 No.32 の電子ブックに掲載されている230ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは マツダ技報 2015 No.32 の電子ブックに掲載されている230ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
マツダ技報 2015 No.32
No.32(2015)マツダ技報する。障害物の検知には超音波を採用している。PSMの指令によってソナーが送波した超音波が車両後方障害物より反射し,その反射波の情報をPSM内で処理することにより,障害物の位置を認識する。障害物の種類や形状にもよるが,センシングの範囲は,車両であれば数m程度の検知が可能である。また,PSMは前述の物標検知機能に加え,SCBS Rにおける,衝突危険性判断機能や,操作ミス判断機能を併せもつ。具体的には,認識した車両後方の障害物の情報と自車両の情報(車速,舵角,アクセル開度,等)を基に衝突の危険性判断や,操作ミス判断を行い,衝突の可能性が高いと判断した場合に,DSCへの自動ブレーキ要求や,PCMへの自動エンジントルクダウン要求などを行う。5.3システムの性能(1)SCBS R①物標検知後退時に発生している事故を分析した結果,停止車両に対する衝突による人身事故が約半数を占めていることから,SCBS Rは,車両に対する衝突被害軽減を目標とした。その結果,対象とする障害物は,自車両に対して正対する4輪以上の車両やそれ以上の大きな障害物(壁など)のみとしている。②衝突可能性判断a.静止物判定ソナー・センサ/PSMが認識した距離情報と,自車両の車速情報から,障害物が静止物か否かの判定を行い,静止物と判定された場合は制御対象とした。b.進行路推定舵角情報から自車両の進行路を推定し,進行路にある物標情報を制御対象とした。c. SCBS Rにおける衝突予測時間の演算衝突被害軽減ブレーキの作動は『ドライバのシステムに対する過信を防ぐ』との考えから衝突が回避できなくなる限界タイミングとしている。③ブレーキプレフィル後方障害物との距離及び相対速度から得られた衝突予測時間の約1秒前にブレーキの液圧を高め,ブレーキ操作に対する応答性を向上させる。④衝突被害軽減ブレーキブレーキプレフィル後,ドライバによる回避操作がない場合,最大9.8m/s2の減速度をDSCに対して要求する。(2)AT誤発進抑制制御[後退時]障害物との距離,アクセルペダルの踏込量及び自車速から目標加速度を演算し,これに応じてエンジンのトルクを抑制する。制御目標は,例えば踏切での閉じ込めや雪道での緊急脱出を考慮し,最低限のトルクを残す仕様とした。この制御により,駐車場等に設置されている一般的な輪止めに後輪のタイヤが接している場合は乗り越えないレベルまでエンジントルクが抑制され,車両の急発進や急加速を防止する。輪留めが存在しない場合においても車両の加速度及び車速が制限され,衝突時の車速を約50%以下(衝突エネルギーは約25%以下)に抑えることが可能である。6.おわりに今回,新型アテンザおよび新型CX-5に搭載した先進安全技術を紹介した。今後も,マツダの安全思想に基づき,i-ACTIVSENSEの技術を継続的に進化させることにより,事故のない安全クルマ社会の実現に向け貢献していく考えである。参考文献(1)ITARDA(交通事故総合分析センター)(2)Roberto Horowitz:Emergency Braking Controlwith an Observer based Dynamic Tire/Road FrictionModel and wheel Anglar Velocity Measurement.(3)安部正人:車両運動力学の理論形成と応用(4)東京大学井上友子:電気自動車における車両すべり角の推定と制御(5)東京大学堀洋一ほか:遅い共振比制御における外乱オブザーバの最適推定速度について■著者■中村正内海将司朝日雅博古山貫一三戸手亮太-221-