ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
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マツダ技報 2015 No.32
No.32(2015)マツダ技報した制御ができるゲイン設定をすると,路面摩擦係数の変化に対するトルク変化の応答性が悪いなどの問題が発生する。そこでディファレンシャルギアと1モータを持つ電気自動車のスリップ率に基づく駆動力制御を高速化し,応答性の高いスリップ率制御を開発した。2.タイヤのスリップ率と駆動力車両の運動を変える際,たとえば加減速や旋回などを行うためにタイヤに力を加えるとタイヤが変形を始める。タイヤと路面間の力の伝達は摩擦力で行われるため,ある程度以上の力を加え,摩擦力が最大静止摩擦力を超えると静摩擦の状態から動摩擦の状態へと移行する。動摩擦の状態は静摩擦の状態に比べ摩擦力が小さいため,力を加えても車両の運動が変えにくい。これにより効率が悪い・ブレーキが効かない・車体が安定せず不快である等のデメリットが多い。この状態を極力避ける手段としてスリップ率制御が開発された。摩擦力は静摩擦状態,動摩擦状態と表現することもできるが,前述のとおり,タイヤをはじめ物体は力を加えると変形するため,静摩擦といわれる状態でも微小なスリップを起こしている。このため,以降では静摩擦状態のことを微小すべり状態,動摩擦状態を巨視的すべり状態と表現する。制動力・駆動力の場合はスリップ率と摩擦係数の関係からこの二つの領域を分けることができる。Fig. 1はスリップ率と摩擦係数の関係を表している。これを見ると微小すべり領域ではスリップ率と摩擦係数の関係は線形的に変化しているが,最大摩擦係数を超えた点からはスリップ率を増加させても摩擦係数は増加しないことが分かる。本制御ではこのスリップ率と摩擦係数の関係を用いて制御則を構築する。Fig. 2 Appearance of Test VehicleFig. 3 Physical Architecture of Test Vehicle制御ロジックを構築するにあたり制御対象をモデル化した。車輪を中心とした車両モデルを考える。Fig. 4のような一輪モデルを考え走行抵抗を無視した時,次式が成り立つ。ここで,Jは車輪周りの慣性モーメント,ωはタイヤの角速度,Tは車輪軸周りのトルク,rはタイヤ半径,Fdは一輪あたりの駆動量,Mは車両質量,Vは車体速度,μは摩擦係数,Nはタイヤ荷重,yは分母を車体速に固定した疑似スリップ率(3)(以下単にスリップ率という),εはゼロ割防止の微小定数である。実際には駆動輪は左右にあるため二輪で考え,Fig. 1 Typical Relationship between Slip Ratio andμ3.車両モデル本研究では制御車両としてマツダデミオEV(Fig. 2)を使う。この車両の構成をFig. 3で示す。前輪駆動でモータからディファレンシャルギアを介してドライブシャフト,前輪へ続く駆動系になっている。とする。添え字のL,Rは左右を表す。さて,直進かつ左右からの駆動力反力が等しければ一輪車両モデルとしても不都合がないが,左右で路面摩擦係数が異なり,左右の反力が異なる路面を走行した時,Fig. 5のようなディファレンシャルギア周りの運動方程式を考慮する必要がある。-229-