ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
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マツダ技報 2015 No.32
No.32(2015)マツダ技報2.コモンアーキテクチャ構想に基づく車両アーキテクチャコモンアーキテクチャ構想(以下CA構想)とは,車格を越えて各ユニットや基本レイアウトの設計思想を共通化することで,多種多様な商品を効率的に創出する取り組みである。PT,ボデー,シャシーといった各機能,各システムにおいて共通の設計思想を貫くのと同様,車全体においても共通の考え方に基づいた開発を実践している。CX-5以降の商品群は,それ以前の“セグメントごとにプラットフォームを共通化する車づくり”から,“セグメントを超えた共通のCA構想に基づく車づくり”へと刷新した。その範囲はプラットフォームに限らず車全体を対象にしている。一例を示すと,プラットフォーム戦略を推進していた時代,デザインはトップハットで主に開発する傾向があった。しかし,CX-5以降の魂動デザインでは,タイヤの車両に対する位置といったプラットフォーム領域にまでデザインの基本骨格を織り込んでいる。このような各機能の理想を車全体で最適に実現する構想を,プラットフォーム構想に対して車両アーキテクチャと称す。車両アーキテクチャでは,着座位置や空間形成の考え方,タイヤ/サスペンション/PT/インパネ等の基本配置の考え方を構築し,この考え方に従った固定/変動構想を確立する。この際に重要なことは,各システム,ユニットの技術進化,特に機能の理想状態を実現するための“寸法上の重点ポイント”を,いかに車として成立させるか,という“賢いモノの配置計画”を体現することにある。同種の取り組みには,昨今VW(フォルクスワーゲン)MQBに代表されるようにモジュール戦略,プラットフォーム戦略が各社で展開されている。これらに対するマツダの特徴を車両統合という視点で分析する。各社の考え方は,粒度の違い(VW MQB:30程度,日産自動車とルノーが共同開発したCMF(コモン・モジュール・ファミリー):4+1,トヨタが提唱するTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ):アッパ/アンダ)はあるものの,車をいくつかのモジュールに分け,モジュールの中で仕事が完結できる状態を作ることで構造的,機能的に分業化し,統合作業の効率化(例えば,組み合わせによるカーラインごとの開発要素の低減や部品共通化など)を図っている。ところで自動車はデスクトップパソコンなどとは違い,機能と構造の関係が複雑に絡むインテグラルアーキテクチャといわれている。機能と構造が一体であることが前提のモジュラ概念をインテグラルアーキテクチャである自動車に適用するには,モジュール間のインタフェースやモジュールごとの役割をモジュールの開発に先行して厳格に規定,確立させることが前提となる。各社の組織改革などの施策を見ても,このような事前のデザインルールの規定が,モジュラ戦略のキーポイントであるように見受けられる。一方,事前のデザインルールの規定は,もし事後に予測を超える新技術の織り込みや仕様変更が発生した場合,必ずしも最適な前提条件であるとはいい難く,結果的に期待する機能,性能に対して冗長となる可能性がある。そのため,事前予測の精度が重要となる。これに対してマツダの場合は,各ユニット,システム間のルールの規定を,各機能/システムのCA構想の確立と同時並行で実施している。同時並行とする理由は,“マツダのクルマ像”を高い次元で実現するには,各機能,システムの重点ポイント,及び,これによるコンフリクト要素を十分熟知したうえで,ルールを規定する必要があるためである。すなわち,機能-構造の複雑性に対して,高度な統合機能を発揮して最適解を導くことで冗長性を回避し,高い商品力を効率的に生み出していくアプローチといえる。これは,大規模メーカが,厳しい環境によって増大する新規開発要素を,効率的な開発によるリソースの再配分という視点で対処しようとしているのに対して,中規模メーカのマツダでは,ブランド戦略により商品の目指す方向が一致していることを利して,全体集約志向で新技術の具現化と効率化を一挙に達成しているといえる。以下に,CX-5以降,一括で構築してきた車両アーキテクチャを紹介しつつ,マツダの商品ラインナップにあって最もコンパクトであり,そのために構造面の制約条件も厳しい新型デミオ,CX-3における車両統合の注力ポイントを,フロント,センタ,リヤに分けて述べる。3.フロントアーキテクチャ3.1横置きFFアーキテクチャの新しい考え方横置きFFは,1960年代後期から,小型車を中心に普及したレイアウトである。フロントタイヤとトランスミッション,エンジンが一体で配置されることで小型化を図ることができ,初代フォルクスワーゲンゴルフなど小型車のスタンダードとなった。横置きFFのレイアウトは,エンジン自体の小型化に加えて,タイヤ~アクセルペダル間の寸法を極力小さくすることが原則であり,これによりエンジンルーム長を最小化し圧倒的な空間効率を実現している(Fig. 1)。North-South LayoutEngine room lengthLongEast-West LayoutEngine room lengthShortFig. 1 East-West FF Layout-15-