ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
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マツダ技報 2015 No.32
No.32(2015)マツダ技報ライバは運転席に座り,外部環境や自車の運動を車体構造,窓枠形状,シートを通して感覚器官,体性感覚から検出し,状況を認知する。そして行うべき操作を判断して,ハンドルやペダルを動かす,ひとつの大きなシステムである。その操作に基づいて車両が運動を起こし,外部環境との相対関係が変化し,それをまたドライバが知覚するというインタラクションを繰り返す。PedestriansOther CarsTraffic Signals,SignsRoad(Curvature, Condition,etc..)Own VehicleMotionVehicleStructure(Body,Suspension,Seat, Wind‐shield, etc.)HMI(Reaction)Vehicle: ControllableHuman: UncontrollableCondition: UncontrollableDrivingPositionSensoryApparatus,SomaticSenseDriver’sBodyMotionDriving FeelBrainCognition,Judgment,andOperationArmandFootsFig. 1 Schematic of Driving BehaviorHMI(Steering Wheel,Pedal,etc.)VehicleMotion運転支援システムの開発において,設計者がコントロールできるのは車両の設計要素だが,その良し悪しは,このインタラクションに内在するドライバによって判断され,運転のしやすさや安心感といった,ドライビングフィールに現れてくる。すなわち良い運転支援とは,ドライバの特性と,車両特性とが調和したものでなければならない。更に,道路形状など外部環境に対して支援するシステムでは,外部環境とドライバの認知特性が調和するよう,その間を仲介する車両や支援方法の設計をしなればならない。マツダではドライバと車両が調和した状態というのは車両がドライバの意に沿った動きとなっており,そのため無駄な体の動きや筋肉の緊張が少ない状態であると考えた。そこで下記の手順により,運転支援技術の開発をした。(1)ドライバの主観評価を表す運転行動の変化や筋活動等の反応を見極め,定量評価を行う。(2)上記(1)の反応が生じる仮説を立て,筋活動や体の動きを低減させる支援方法を立案し,効果を確認する。3.操舵支援の設計3.1車線維持支援システム(LAS)の主観評価と課題LASは,走行中に常に舵を支援するシステムであるため,ドライバが操舵する際の違和感がなく,一方で支援感を与えることが要件となる。マツダではこれらの相反する要件の両立のため,ドライバの腕の使い方に注目し,腕の筋負担を効果的に低減する支援手法を提案してきた(1)。次に,LASの操舵支援量を0%~100%で変更できる技術検証車両を用意し,支援量に対する負担の軽減度合を調査する主観評価を行った。支援量0%とは操舵支援が全くない通常の車両の状態であり,支援量100%とはドライバが操舵しなくても車線内を走行できる支援を意味する。実験は運転支援システムの開発に従事する男性4名を対象として,最小曲率半径R=300mの周回路にて車速100km/hでの定速走行を行うことにより実施した。その結果,提案してきた制御則に基づき支援量を上げていくと腕の負担は下がるものの,あるところから腕以外の部位で負担を感じる主観評価結果が得られた。そこで2章の考え方に基づき,運転姿勢維持を含む体全体の変化を捉えた設計に取り組んだ。3.2操舵支援量と運転姿勢の関係・仮説立案主観評価と同じ条件のもと,操舵支援量に応じた頭部/胴体の変動と首・腕・胴・脚の筋電を計測した。実験結果をFig. 2に示す。図の左側のグラフは支援量に対する頭部および胴体の,車両に対するロール方向の傾きである。また右側のグラフは筋活動を示しており,事前に計測した最大随意収縮(MVC : Maximum Voluntary Contraction)で正規化した値である。結果から操舵支援量を大きくすると,操舵反力が減ることにより,上腕三頭筋などの腕の負担は軽減されることが分かる。ところが主観評価どおり,胸鎖乳突筋(首)や大腿四頭筋(足)の活動量が増えている。この現象を理解するために,腕の機能を改めて考える。結果の中で,支援により胸鎖乳突筋や大腿四頭筋を活動量が増えるのは,旋回に起因する横加速度が大きくなり,頭部や胴体に強い遠心力が加わるシーンの場合である。この場面で支援が大きい場合,操舵反力が小さくなっているため,力をいれてハンドルを持つことが難しい。そのためドライバは遠心力に抗うために腕が使い難くなり,胴体と足を使って運転姿勢を維持することになり,結果のような筋活動となったと考えることができる。以上から腕の機能は,「舵を回す」だけでなく「運転姿勢の維持」という機能があると再定義し,両方を考慮した支援にする必要があると考えた。Angle of HeadPosition(deg)Angle of BodyPosition(deg)210‐1‐2‐3Impossible to‐4keep the neck position‐50 20 40 60 80 1003210‐1R1000 R600 R300Impossible tokeep thebody position‐20 20 40 60 80 100Steer Assist (%)TricepsBrachii(Arm)(%MVC)Sternomastoid(Neck)(%MVC)QuadricepsFemoris(Leg)(%MVC)The arms keep the body4320 20 40 60 80 10012Activity of neckincrease1080 20 40 60 80 10011Activity of legsincrease1090 20 40 60 80 100Steer Assist (%)Activity of armsdecreaseFig. 2 Relationship Between Steer Assist and MuscularActivities3.3制御則と効果確認運転姿勢の維持の観点で,腕が果たしている機能について考察する。Fig. 3に示すように,ドライバはシート座面-241-