ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
- ページ
- 262/306
このページは マツダ技報 2015 No.32 の電子ブックに掲載されている262ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは マツダ技報 2015 No.32 の電子ブックに掲載されている262ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
マツダ技報 2015 No.32
No.32(2015)マツダ技報来持っている特性を最大限引き出す使い方」である。CF強化樹脂では高強度・高弾性率の特性を活かして,大幅な軽量化の可能性があるが,構造部材を対象としたプリプレグの成形品ではCFを多く添加しているため高価になり,高級車での採用にとどまっている。そこでマツダはCFの導電性にも着目した。さらに,CFの一本一本をしっかり機能させて,少ない添加量で最大の効果を得ることで,コストを抑え量産車に広く採用していくことをねらいとした。そのために,汎用的な成形工法である射出成形を採用し,CFを長く残しつつ,分散性を高めて導電ネットワークを形成させることで,数wt%の少量添加でも十分な電波遮蔽効果を実現する樹脂複合技術を開発した。まで導電体で遮蔽できるが,磁界成分は低周波と高周波で遮蔽メカニズムが異なる。低周波の磁界遮蔽には透磁率が高い磁性体を使用する必要があるが,高周波では導電体において電磁誘導効果により遮蔽が可能となる。従って,高周波である本用途においては,遮蔽用材料として導電体を採用することで電波遮蔽が可能となる。射出成形に用いる導電性フィラーは,カーボンブラックが一般的であるが,粒子状であり,導電性塗料のスプレー塗布による層形成により高密度化するのとは異なり,製品内全体にフィラーが分散するため,高い電波遮蔽効果を得るには30wt%以上の高充填が必要となる。一方で,繊維状の導電性フィラーは高価なため,いかに少ない添加量で製品内に効率的に導電ネットワークを形成するかが電波遮蔽効果を達成するためのポイントとなる。そこで,電波遮蔽機能を得るための導電性フィラーとして,繊維状で径が細く低比重,すなわち同じ添加量でも繊維の数を多くできる,また導電性の経時安定性に優れる,といった利点を持つCFを選定した。CF添加量は5wt%未満に抑えて,遮蔽効果は一般的に効果があるとされる20dBより高い値とすることを目標とした。また,レーダユニットを車体に締結するためのBRKTの機能を,樹脂製電波遮蔽カバーに統合させた。レーダ本体の保持に対するワースト条件を想定して,高温の弾性率を確保する必要があり,目標値はCAEにより算出し,1.1GPa以上とした(Table 1)。Fig. 1 Electromagnetic Wave Leaked by BumperTable 1 Target Value of Material PropertiesItemUnitTargetCF Contentwt%<5Electromagnetic Shielding EffectdB>20Elastic Modulus (80℃)GPa>1.1Fig. 2 Electromagnetic Shield Cover Integrated BRKT2.材料開発の考え方2.1要求材料特性自動車に使われている電波は多種多様であり,周波数により遮蔽メカニズムが異なる。後側方レーダで使用される電波はラジオや,タイヤ空気圧センサなどに比べて周波数が高い24GHzの直線偏波である。通常,電磁波を構成する電界成分は低周波から高周波2.2開発方針CF少量添加で目標とする遮蔽効果を達成するポイントは,CFの繊維長と分散性の両立である。CFを射出成形する場合,Fig. 3に示すように混練条件によって繊維長と分散性は背反する。例えば,混練条件を調整してせん断力を抑えると,繊維長を長く残すことができるが,解繊しにくくなり繊維が密集したところができてしまい,CFの機能を十分に活用できない。従って,樹脂内部でCFを均一分散させる対策が必要である。マツダは,成形プロセスのなかでペレットをシリンダ内で溶融混練する際の解繊性が重要と考え,特にCFとPPの界面の接着性に着目した。つまり,接着性が低いとCFにせん断力が伝わらないためCFが凝集してしまうが,接着性が高いとCFがPPに引き寄せられ一緒に動くことで解繊が進み,均一に分散すると考えた。そこで,マトリクスPPの変性とCF表面の改質処理を選定し,界面接着性を上-253-