ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
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マツダ技報 2015 No.32
マツダ技報No.32(2015)2.バンパ成形の技術向上2.1バンパ成形の技術向上への取り組みバンパは,溶けた樹脂を金型内部へ注入し,冷却固化した後に取り出すという射出成形工法で生産している。この工法は,種々ある量産における工法の中では転写性が高く,魂動デザインの持つ複雑な曲面やキャラクタラインの再現に適した工法で,生産効率も高く大量生産に適している。そのビジネス効率を更に向上させるために,これまで以下の取り組みにより効果を出してきた。①従来材料と比べて重量強度比を20%向上させた,高剛性材料の導入と薄肉による車両の軽量化②業界トップクラスのハイサイクル成形による,省エネと生産能力の向上③周辺部品を取り込み同時に成形することで,型数削減と生産効率向上を実現そして,今後バンパの付加価値を高めビジネス効率をより向上させるには,デザイン自由度や品質に与える影響が大きい金型構造での更なる改善が重要であると考えた。CavityCross‐Section‐View of MoldCoresParting LineAngularBlockBumperEjector BlockCore2.2付加価値とコストを両立した金型とはビジネス効率最大の金型を実現するには,VとC双方の向上が欠かせない。しかし,高まるデザインニーズと環境・安全といったバンパ機能を満たすため,他部品との一体感向上のための位置決めや,部品を設置する締結が必要になり,バンパ構造は複雑になる傾向にある。そのため金型構造も,Fig. 2に示すように多数のブロックを組み合わせた複雑な構造になり,強度の低下や「割り」と呼ばれる分割面が多数発生する。割りに生じる段差はバンパ表面の平滑性を阻害するが,完全に0mmにはできない。そのため今後,魂動デザインの持つ流麗な面の忠実な再現を追究していく中で,障害となることが予想された。そこで金型造りにおいて,デザイン・バンパ設計の自由度を更に高めながら優れた生産性を達成するには,形状面に分割のない1つの部品で作られた「ワンピース金型」を目指すことが最も重要と考えた。つまり,金型構成部品点数が極少化されたシンプルな金型構造によって,バンパ裏面に存在する金型の「割り」の量をミニマム化しながら,金型を軽量・シンプル・高強度に作れるため,VとC双方の向上を実現できる。(Half Model)Fig. 2 Cores Parting Line3.金型の目指す姿へ必要な技術目指す姿を実現するには,割りが必要な金型構造をいかに減らすかが重要である。これは,後述する「アンダーカット処理構造」と「突き出し構造」に分類され,それぞれ生産に必要な機能を金型へ持たせている。そのため,金型におけるバンパ裏面の割りをなくしてワンピース金型を達成するには,必要機能の定義とその性能を定量化して構造の要否を判断するための,以下3つの技術が必要である。3.1金型強度の評価技術射出成形金型は溶融した樹脂が高速で注入されるため,部位ごとに約40~100Mpaという非常に高い圧力が加わる。そのため金型の強度が低いと,金型が変形してシール部に隙間ができるため,その隙間から樹脂が漏れ出て固まるバリ不良が発生する。バンパ裏面に割りの多い金型は強度が低下し,シール部からのバリも増えて不良が増加する傾向にある。従来は,バリの発生を予測するために,簡易的な理論式に置き換えて計算を行う程度であったため,精度が低くバラツキがあった。ゆえに,バリ発生の予測を正確かつ定量的に行うためには,樹脂圧による金型変形量を100分の1ミリという精度で,正確に予測する技術が必要である。-258-