ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

Thickness[mm]Thickness [mm]No.32(2015)マツダ技報込む取り組みを行った。その結果,机上検証ではスプリングバック増大による長手方向に沿った寸法精度不良が最も大きな課題となった。Fig. 5に異車種,同一部品でのスプリングバック量の違いを示す。CAE結果からスプリングバック増大の主要因は降伏点が高いために部分的に塑性域に移らず弾性域内で形状が元の形に戻ろうとするためであることを解析し,形状凍結性向上と縮み量低減による対策案を検討した。4.プレス金型設計上の課題と取り組み4.1高強度鋼板におけるプレス金型の現状引張強さ980MPa級をはじめとした高強度鋼板は,金型調整に多くの工数がかかっている。1180MPa級材料の採用にあたり,プレス金型にかかる負荷がより高まることで,金型調整工数増加が懸念され,対応が求められた。4.2金型に負荷される打ち抜き荷重についてここでは,鋼板を切る機能を持つせん断型にかかる負荷として,打ち抜き力について説明する。せん断部の長さL[mm],板厚t[mm],引張強さ? [N/mm2]の打ち抜きに要する力P[N]は,式(1)によって求められる。BP =K・L・t・? (1) K:係数BFig. 5 Amount of Spring Back具体的には,型から離形後のパネルでは形状がだれて形状剛性が低下していることから,部品長手方向の稜線Rを離形後に正寸Rになるように見込む。そして剛性を上げるための部品内ビード形状の追加を検討した。また,フランジ部分へ新たにノッチを追加することでフランジ成形での縮み量を低下,分散を図った。これら部品形状変更を伴った検討内容を開発部門に提起し部品,車体性能と量産性の両立を図りながら対策を実現した(Fig. 6)。対策の結果,各工程でのスプリングバック量はフォーム工程では52.7%,フランジ工程では43.2%の低減を実現した。残りのスプリングバック量に対しては金型を見込むことで対処し金型製作の段階に移行した。Fig. 6 Measures Shapes in Part Shape3.4実型における机上検証結果の確認金型製作後の初加工品では机上検証結果以上のキャンバーバックが発生した。発生原因はCAE検証において実機での成形状態を詳細に再現しきれず成形荷重に差異が生じていたためであった。成形荷重の差異を解消したCAE検証要領により実機との一致度を取り,金型を見込み直すことで部品単体での寸法精度を満足させた。Fig. 7に現行と新型デミオに適用された鋼板の板厚と引張強さを示す。現行モデルに対し引張強さは増加傾向にあり,式(1)より1180MPa級をはじめとして,打ち抜き力がより高まる傾向にあり,金型に与える負荷が高くなっている。2.521.510.50Previous ModelNew Model0 500 1000 1500Tensile Strength[N/mm2][MPa]Fig. 7 Thickness per Tensile Strength4.3高強度鋼板におけるプレス金型の課題せん断加工の中でも切断部の加工精度が必要なテーラードブランク材を取得するブランキング型の事例を紹介する。ブランキング型とは,コイル材から絞り成形に最適なシート材を打ち抜く金型である。その複数のブランキング型で取得されたシート材同士を溶接して1枚のシート材にしたものをテーラードブランク材と呼び,最適な板厚と高剛性を両立させる軽量化対応として適用拡大している。シート接合部となるせん断部は,一般的なせん断部と比較して要求品質が高く,その金型調整には多くの工数を要している。これまでは,テーラードせん断部の品質問題を現場の経験的な対処法により解決してきたが,材料の高強度化により打ち抜き力が高まるにつれて,より多くの工数を費やすようになってきた。しかしながら,品質問題の発生メカニ-67-