ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

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マツダ技報 2015 No.32

マツダ技報No.32(2015)ズムが明確でなく,金型設計段階に打ち抜き力の増加に伴ったリブの配置,形などを保証できていなかった。このせん断部の要求品質を満足させるためには,机上で打ち抜き力によって生じる金型の挙動を予想し対策する必要があり,金型構造解析の技術構築に取り組んだ。4.4構造解析を用いた金型構造革新の取り組み従来の解析手法では,金型を構成する部品単体でしか解析が行えず,ブランキング型を構成する1000点以上の部品全てをまとめて解析し,複数部品間の力の伝ぱを机上で再現できなかった。また,金型サイズが約3000×2000×800mmもある中で,テーラードせん断部の要求品質は,0.01mmオーダであり,解析でも同等のオーダで挙動を把握する必要性があった。上記を実現するために,新たな解析環境を構築した上で,最適なメッシュ作成,境界条件設定などのプリプロセッシングにおける技術構築を行うことで,複数部品の解析が可能となり,部品間を力が伝ぱする状態を机上で確認することができるようになった。Red:ForceLarge DeformationHolderRiserBlue:Small DeformationFig. 8 Structure Analysis of the Dieこの解析技術を用いて,過去に品質問題が発生した型と発生しなかった型を解析し,金型の挙動を相対比較した。結果,問題発生箇所と金型のたわみに相関関係が認められ,この品質問題の発生メカニズムは,せん断加工部が打ち抜き力の影響によりたわんだ状態で,シート材をせん断することによって発生していると推測された。また,解析上で品質保証ができるように,せん断加工部のたわみと現物のシート材の加工精度の関係より,たわみの閾値を導き出した。設定した閾値による評価を金型設計時に適用したところ,高い打ち抜き力が負荷される金型において,閾値を超えた,たわみが発生していることが確認された(Fig. 8)。解析技術構築時において,力を受ける機能部位周辺にかかる力を分散させることが,金型のたわみ低減に有効である知見を得られており,テーラードせん断加工部も同様に,打ち抜き力を分散するように,リブの配置や厚さなど周囲の金型構造を再設計した。従来は,品質改善初期段階において,このせん断部に真直度0.09mm,だれ0.3mm,溶接接合不良率20%発生していたが, (Fig. 9にせん断部溶接接合箇所を示す)保証した金型構造では,1回の金型調整で真直度0.04mm,だれ0.15mmに抑え,溶接接合不良率0%を達成し,金型改善工数を大幅に削減することができた。Material AWelded Joint SurfaceFig. 9 Welded Joint Shearing Surface5.接合の課題と取り組みMaterial BRollover Depth20% Weld Defect5.1接合強度面での課題材料強度とスポット溶接接合強度の関係をFig. 10に示す。引張せん断強度は材料強度が上がるにつれて増加していくが,十字引張強度は780MPaを超えたあたりで飽和し,1180MPaでは低下していることが分かる。また,軽量化のため高強度化とともに薄板化された部位は,更に接合強度が低下する。このような高強度鋼板の強度特性を把握し,打点位置や打点数など製品設計への織り込みを行った。Strength of Joints [kN/spot]Sheet thickness: t=1.2mmNugget diameters: 4.5 mm- Tensile Shear Strength- Cross Tension Strength0 200 400 600 800 1000 1200 1400Tensile Strength of Base Steel [MPa]Fig. 10 Effect of Tensile Strength of Base Steel onSpot Weld Strength5.2スポット溶接性の課題材料強度とスポット溶接性の関係をFig. 11に示す。一定条件下で溶接電流のみを変化させ,基準強度を満足する電流から入熱過多によりスパッタが発生する電流までを求めた。この電流範囲を適正電流範囲とよび,広いほど溶接性が良い。同板2枚重ねで溶接性の比較を行った場合,同一条件では,材料強度が上がるにつれて適正電流範囲が低電流側にシフトし,範囲が狭くなっていることが分かる。-68-