ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32
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マツダ技報 2015 No.32
No.32(2015)マツダ技報これは,材料成分による電気抵抗率の増加や,母材強度の増加による通電面積の減少の影響と考えられる。2枚重ねの場合,電極加圧力の増加や,本通電前に余熱を加えるプリヒート等により,通電面積を拡大することで適正電流範囲を拡大できる。4.5 Nugget Expulsion780MPa980MPa1180MPaWelding Current [kA]Fig. 11 Effect of Tensile Strength of Base Steel onSuitable Welding Current Range5.3生産面での課題と取り組み生産現場では,溶接強度とスパッタレスの両立に取り組み,溶接品質の安定化を図っている。実車では,さまざまな板組が存在し,適正な溶接条件が異なる。Table 1に新型デミオの板組の一例を示す。Table 1 Sheet CombinationParts name Strength ThicknessSide Flame Outer 270MPa 0.65mmFront Pillar Reinforcement 780MPa 1.4mmFront Pillar Inner 1180MPa 1.2mm高強度鋼板2枚に軟鋼板(270MPa)の薄板を加えた3枚重ねでは,高強度鋼板間と軟鋼板薄板-高強度鋼板間とで抵抗率の差が大きいことから熱バランスが悪化し,薄板側のナゲットの生成が困難であるため,一般的な溶接条件では適正電流範囲を十分に得ることができない。そこで,溶接条件の設定を改善した。一例として,2段通電として溶接性を改善する通電パターンでは,第一通電を短時間高電流にすることで薄板側ナゲットを生成させ,第二通電を長時間低電流にすることで厚板側ナゲットを生成させた。これにより適正電流範囲を拡大することができた。また,生産現場では,部品の合い沿いや溶接ガンの施工状態によって,適正電流範囲が変化する。特に,高強度化により溶接性に対する板間隙の影響が従来材と比較して大きくなる。Fig. 12に板間隙と適正電流範囲との関係を示す。板間隙により溶接性は大きく変化することが分かる。そのため,溶接品質という目的で従来よりも厳しい公差で板間隙を管理した。更に,適正溶接条件はスポット溶接1打点ごとに異なるため,それに合わせて溶接条件は1打点ごとに1条件を設定し調整することで溶接品質を確保した。4.5 NuggetExpulsionGap 0㎜Gap 0.7㎜Gap 1.4㎜Welding Current [kA]Fig. 12 Effect of Gap on Suitable Welding Current Range6.ボデー精度保証の課題と取り組みボデーへの超高強度鋼板適用にあたっては,プレス成形や金型設計等の部品精度保証課題への取り組みに加え,それらを接合するボデー精度保証への取り組みも必要である。そこで,本章では車体組立工程でのボデー精度保証に対する取り組みについて述べる。6.1ボデー精度保証の現状と課題ボデーは複数のプレス部品を組み合わせているため,ボデー精度は部品の接合面精度の影響を受けやすい。通常,接合面精度は0.1mm単位の調整を複数回繰り返して行っている。鋼板は強度が上がるほど寸法精度のコントロールが難しく,寸法精度を調整する期間もそれに比例して必要となる。超高強度鋼板を適用する比率が増えてくるこれからのボデー精度保証においては,接合面精度を部品精度のみで保証するのでなく,車体組立工程として接合面精度を補助する保証方法とプロセス構築が急務である。6.2接合面精度を補助するボデー精度保証の取り組み6.1で述べたように超高強度鋼板は寸法精度のコントロールが難しい。そこで,部品精度の許容範囲を通常よりも緩和しつつボデー精度を保証するために,加工基準の配置を見直して部品の接合面精度を補助する方法を考えた。加工基準とは,3次元空間中の指定位置に部品を配置し,接合での変形を防止し,狙いのボデー精度を保証するための基準穴と保持面のことを指す。この加工基準を1180MPa級超高強度鋼板に合わせて,部品の接合面精度を補助するために配置を見直した。以下に加工基準の配置とボデー精度保証の考え方について述べる。(1)旧型デミオまでの考え方部品の位置を拘束できる必要最低限の加工基準を配置し,商品機能に必要な精度を部品として保証する。部品単体での寸法精度が満足していることを前提として,その寸法精度を重力やその他の外力により変化させないように加工基準を配置し,接合することでボデー精度を保証していた。(2)新型デミオからの考え方部品として保証する特性のうち,一部の接合面精度を車-69-