ブックタイトルマツダ技報 2015 No.32

ページ
79/306

このページは マツダ技報 2015 No.32 の電子ブックに掲載されている79ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

マツダ技報 2015 No.32

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

マツダ技報 2015 No.32

マツダ技報No.32(2015)体組立工程の中で補助する基準を検討した。3章で紹介したプレス部品の精度検証結果から,接合面の中でどこが精度を出しにくいかを明確にした。そして,解析ソフトを用いて,その部位を補助する上で最も効果がある部位,部品を狙いの精度に拘束するために必要な力,接合後の拘束解放時の変位も検証した。その結果,設計段階においては,部品が狙いの精度まで行きつかなくてもボデー精度を保証できる加工基準を設定した(Fig. 13)。この過程で,部品精度のコントロールの難易度によって,プレス部品の精度検証結果を活用する新たな加工基準設定プロセスを考案した。Locator HoleLocator SurfaceLocator Surfacefor Assist(New)Locator SurfaceFig. 13 Locator of Front Pillar Inner in New Demio6.4今後に向けた取り組み今回の取り組みでは,実機での検証によってボデー精度保証プロセスを補う必要があった。今後は,実機での検証を設計段階へ前倒すことによって,新たなボデー構造の提案や,他工程へまたがった精度保証プロセスの構築など,ボデー精度保証方法のアプローチの幅を広げ,これからの商品開発とお客様価値の向上に貢献していく。7.おわりに以上が1180MPa級超高強度鋼板を自動車車体に適用し,安定量産するための取り組みである。超高強度鋼板はその本来の特性により,生産性を悪化させる方向に働く。設計部門と生産部門が相反する要求の中で,各部門の担当者が密接に議論を重ねることにより達成できた。高強度・高剛性と軽量化との両立によるマツダのブランドが目指す“走る歓び”の実現に貢献できたものと考える。参考文献(1)中村ほか:新型アクセラの軽量ボデーシェル開発~SKYACTIV-BODYの更なる進化~,マツダ技報,No.31,pp.14-18(2013)6.3ボデー精度保証プロセス変革の取り組み6.2で述べた加工基準によってねらいどおりの効果を得られるか,実際の部品と車体組立工程で検証した。設計段階で設定した接合面精度を補助するための加工基準について,実際の工程内で狙いの精度で拘束できることを3次元測定器で確認し,そのために必要な拘束力も定量的に計測した。その結果,解析ソフトでの検証から得られた部品を狙いの精度に拘束するために必要な力について,実機との一致度が確認できた。一方で漏らしていた要素も見つかった。それは打点順序と打点位置である。部品を接合する打点の順序と打点位置によって,接合後の拘束解放時の変異に1.0mm程度の差が見られた。部品の接合後のボデー精度を1点1点確認しながら,最適な打点順序と打点位置を実機にて調整し,拘束解放時の変位を縮小した。ボデー精度は保証されたが,接合面を拘束したことによる内部応力の影響が懸念された。内部応力の影響は車体組立工程の次工程である塗装工程で現れる。そこで,車体での検査ツールを塗装工程に持ち込み,塗装工程での精度を確認することで,内部応力による精度変化への影響がないことを確認した。設計段階で足りていなかった打点順序と打点位置等の検証を補い,実機検証のやり方を改善して検証手順に織り込んだ。6.2で述べた新たな加工基準設定プロセスに加え,打点順序や打点位置の要素を設計段階での検証へ織り込むことで,設計段階での検証精度を更に高めたボデー精度保証プロセスを構築した。■著者■坂野律男岡田又治丸山秀幸小田修二清水昇森林竜也-70-