ブックタイトルマツダ技報 2016 No.33
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マツダ技報 2016 No.33
No.33(2016)マツダ技報2.2エネルギーの種類とエネルギー変換技術エネルギーの種類とエネルギー変換技術をFig. 1に示す。太陽光発電と電解技術を組み合わせて水素やメタン等の高エネルギーな化学物質を製造することが技術的に可能である。目的とする再生可能液体燃料を得るには,複数のプロセスを組み合わせることとなるが,エネルギー変換プロセスが増えるほど効率は低下する。これらのプロセスの選択には,プロセス全体で投入エネルギー,コストが最少で,CO2削減量が最大となる観点で検討することが望まれる。このような視点から,将来のエネルギー創成技術として,光エネルギーを化学エネルギーに直接変換できるバイオ燃料と人工光合成が有望と考えられる。以下,バイオ燃料と人工光合成の日本での研究動向について総説する。Heat energyHeat engineSolar energycollectorFrictionMechanicalenergyCombustion・ThermochemicalcycleSolar energyChemicalenergyMotorGenerator・Photosynthesis (Biomass)・Artificial photosynthesisPhotoreactionLight energyChemiluminescenceFig. 1 Energy Conversion Technology3.バイオ燃料の研究動向ElectricalenergyCO2排出量の削減に加え,エネルギー安全保障,地域経済活性化という観点からもバイオ燃料が注目されている。3.1第一世代バイオ燃料(可食バイオマス由来)バイオ燃料は,植物が生育する際に大気中のCO2を吸収するので,CO2削減効果があると考えられている。(1)バイオエタノールガソリンに混ぜて自動車用燃料として使う植物由来のエタノールのことを「バイオエタノール」と呼ぶ。ブラジルではサトウキビの糖質,米国ではトウモロコシのデンプン質を原料に,発酵法で生産している。米国では2007年にエネルギー政策法が改定され,バイオエタノールの生産を2022年までに自動車燃料の20%に当たる360億ガロンとしようとしている。米国,ブラジル,欧州の一部では10vol%を超えるバイオエタノールをガソリンに含有したE10燃料を,日本では3vol%混ぜたE3燃料を使用している。(2)エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)ETBEは,バイオエタノールとイソブテン(石油精製時の副産物)から合成される。バイオエタノールを原料とPhotovoltaicElectric lightするETBEは8vol%以下でガソリンに混合され,日本では2007年からバイオガソリンとして販売が始まった。エタノールは水との親和性が高く,空気中の水分を吸収するため取り扱いが難しいが,ETBEは水に溶けないのでガソリンと同じように取り扱える利点がある。(3)バイオディーゼル燃料植物あるいは動物から採れる油脂にメタノールを加えてメチルエステル化すると,軽油に近い物性をもつ脂肪酸メチルエステル(FAME:Fatty Acid Methyl Ester)ができる。FAMEは原料によって性状が異なるので,ディーゼル燃料への混合は5wt%以下と定められている。粗パーム油を水素化処理によって脱炭素・分解し,ディーゼル燃料として利用する水素化バイオ軽油(BHD:BioHydro-fined diesel)の研究開発や実証実験が進められている。BHDは石油系燃料と同等性能なので添加量制限はなく,次世代バイオディーゼル燃料として期待されている。3.2第二世代バイオ燃料(非可食バイオマス由来)食糧と競合しない農業残渣や建築廃材,製材残材等の廃棄物系バイオマスから製造されるバイオ燃料を第二世代バイオ燃料と呼ぶ。第二世代バイオ燃料は,研究開発段階にあり,実用化には至っていない。(1)バイオエタノール(非可食)木材をチップや粉状にし,濃硫酸法,希硫酸法,酵素糖化法等で前処理した後,セルロースやヘミセルロースを発酵プロセスで糖化してバイオエタノールを製造する研究が進められている。セルロース由来エタノールは,原料に廃棄物系バイオマスを用いるため,生産時にエネルギーを大量投入する可食バイオマス,特にトウモロコシ由来のバイオエタノールに比べてCO2排出量の削減効果が大きい。(2)バイオマス・ツー・リキッド(BTL)ガス化炉を用いて廃棄物系バイオマスを一酸化炭素(CO)と水素に分解し,この合成ガスを「フィッシャー・トロプシュ(FT)合成」で反応させると,軽油相当の炭化水素系液体燃料が製造できる。BTLディーゼル燃料は,硫黄や芳香族炭化水素を全く含んでいないので,すすや窒素酸化物がほとんど生成しないクリーンな排出ガスになる。3.3第三世代バイオ燃料(藻類由来)藻類とは,淡水または海水に生育し,体内の葉緑素で酸素発生を伴う光合成を行い,陸上植物のように明確な根,茎,葉の区別がない生物の総称である。大型藻類(ノリ,ワカメ等)と微細藻類に大別される。微細藻類は光合成により炭水化物を合成するが,その副産物として油脂を生産する。微細藻類は光合成能力が高く,その多くは24時間以内で倍増するため,陸上植物の10倍以上のCO2固定能力をもっている(2)。-95-