ブックタイトルマツダ技報 2016 No.33

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マツダ技報 2016 No.33

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概要

マツダ技報 2016 No.33

マツダ技報No.33(2016)(株)東芝とパナソニック(株)の大きな違いは,カソード極の触媒材質にみられる。パナソニック(株)はCu触媒でCO2をメタン等に還元したのに対し,(株)東芝はナノサイズの金(Au)触媒でCO2をCOに還元している(13)。(株)東芝はアノードに助触媒の酸化コバルトを担持した多接合型太陽電池を使用している。このアモルファスシリコン太陽電池は,アモルファスシリコン及びアモルファス・シリコンゲルマニウムから成る3層構造の太陽電池で,紫外線から赤外線まで波長が異なる光を幅広く吸収できる。(3)水素発生用光触媒と酸素発生用光触媒の組み合わせNEDO人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は,太陽エネルギーを利用した光触媒による水からの水素製造で,エネルギー変換効率が世界最高レベルとなる2.2%を達成したと発表した(14)。酸素発生用触媒にBiVO4,水素発生用触媒には可視光領域の光を吸収できるCu(In,Ga)Se2を採用し,これらを塗布した電極を導線でつないでタンデムに配置した。各研究機関で研究開発された人工光合成システムの太陽光エネルギー変換効率をFig. 3に示す。ール変換技術を応用し,CO2→酢酸→アセトアルデヒド→エタノールの経路でエタノール合成が可能ではないかと考えた。CO2からの酢酸合成は,CO2と水素と酢酸生成菌で成立する可能性がある。この反応の原料となる水素は,再生エネルギーや光触媒等を用いて製造することができるので,化石燃料を一切用いないシステムを構築できる可能性がある。上記のコンセプトをFig. 4に示す。天尾教授の人工光合成によるCO2からのメタノール合成の知見をベースに,CO2を酢酸に変換する酢酸生成菌を組み合わせることを前提に,酢酸-エタノール合成人工光合成システムを検証した。・Photo Voltaic+ Electrolysisor・PhotocatalystAcetogenicbacteriaCO 2H 2H 2OCH 3COOHVisible-light* Zn Chl-e6DehydrogenasesMV 2+ MV .+PhotoredoxsystemZnChl-e 6NADP +CH 3CH 2OHZn Chl-e 6+NADPHZn Chl-e 6 :visible light photosensitization ofchlorophyll derivative, chlorin-e 6 of zinc complexMV 2+ :methylviologenNADPH:electron donating reagentEnergy conversion efficiency(%)1010.10.01CO 2→HCOO -0.04 %CO2→CH4 0.3 %Toyota PanasonicCentral R&D @2014Lab @2011CO2→CO 1.5 %Toshiba@2014H 2O→H 22.2 %NEDO@2015CO 2→HCOO -4.6 %ToyotaCentral R&DLab @2015Fig. 4 Concept of Visible-light Induced Ethanol Synthesisfrom Carbon Dioxide, Water5.2実験結果と考察酢酸-エタノール合成人工光合成システムは,電子供与体NADPH,光増感剤クロリン-e6亜鉛錯体,電子伝達体メチルビオローゲン及びアルデヒド脱水素酵素,アルコール脱水素酵素から成る(Fig. 5)。Fig. 3 Energy Conversion Efficiency of latest ArtificialPhotosynthesis5.マツダの人工光合成の研究大阪市立大学人工光合成研究センター天尾教授とマツダは,酢酸から自動車の燃料になるエタノールを作り出す新規の人工光合成技術を開発した(15)。5.1研究コンセプト光触媒あるいは人工光合成によるCO2還元生成物として,CO,ギ酸,メタノール等が報告されている。メタノールについては,天尾教授らによって原理検証が行われている(16),(17)。このようにCO2を炭素数1のメタノールに変換する人工光合成系は報告されていたが,炭素数を更に一つ増やしたエタノールを作り出す技術には至っていなかった。光エネルギーのみでCO2から一段でエタノールを人工的に合成することが可能かどうかは現時点では分からないが,酢酸を出発原料にすれば天尾教授のCO2-メタノCH 3COOHDehydrogenasesCH 3CH 2OH30 mMMV2+ MV .+1.4 mM(150 min)Visible-light*Zn Chl-e6ZnChl-e 6(100μM)PhotoredoxsystemNADP +Zn Chl-e 6+NADPH(3.3 mM)Zn Chl-e 6 :visible light photosensitization ofchlorophyll derivative, chlorin-e 6 of zinc complexMV 2+ :methylviologenNADPH:electron donating reagentFig. 5 Experimental Conditionこのシステムに可視光を照射し,150分後に反応溶液を分析した結果,エタノールが生成した(Fig. 6)。生成エタノール濃度を原料の酢酸の濃度で除した変換効率は,4.7%となった。電子伝達体メチルビオローゲンの濃度が高くなるほど,エタノールの生成濃度・効率が向上することを見出した。一方,光照射が無い条件では,エタノール-98-