ブックタイトルマツダ技報 2016 No.33

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マツダ技報 2016 No.33

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概要

マツダ技報 2016 No.33

No.33(2016)マツダ技報し,微細結晶化させ発泡核剤として利用することを試みた(6)。本研究では,結晶核剤による気泡微細化の検証を行うとともに,自動車用ブロックPPにおいて,コアバック動作条件を調整することで,微細独立気泡や高連通率気泡構造の作り分けを試みた。更に,低発泡倍率の成形品では構造体の機能として要求される曲げおよび衝撃特性の評価を,高発泡倍率の成形品では付加機能として吸音特性の評価を実施した。ガスを使用した。結晶核剤は可視化実験と同じものを使用し,ベース樹脂と同じブロックPPをマトリクスとした核剤5.0wt%のマスターバッチをドライブレンドして,核剤が0.5wt%になるように希釈して発泡射出成形した。2.実験方法2.1気泡微細化の可視化実験実際の射出成形時に結晶化と気泡成長の挙動を観察することは困難なため,バッチ発泡装置を用いてマイクロスコープでの可視化を試みた(Fig. 1)。ベース樹脂には,純粋なホモPP (メルトフローレート(MFR)=3)と,ホモPPに比べ結晶化度が低く帯電防止剤や紫外線吸収剤なども添加されている自動車用ブロックPP(MFR=36)を用い検証を行った。結晶核剤は,1,3:2,4bis-O-(4-methylbenzylidene)-D-sorbitol gelling agent(ゲルオールMD;新日本理化(株)製)を使用し,ベース樹脂に0.5wt%添加した。結晶化挙動の観察は,ヒーターで溶融状態からPPの結晶化温度付近まで温度を低下させながら観察した。気泡の生成・成長挙動の観察は,コアバック発泡による内部圧力の低下を模擬するため,減圧弁を開放し圧力を制御して観察した。Fig. 1 Batch Foaming Apparatus2.2気泡微細化の成形実験実験にはTrexel社のMuCellRシステムを搭載した35ton電動射出成形機を使用した。金型は1点ダイレクトゲートの平板型(70mm×50mm,厚みは可変)を使用した。射出時の板厚は2.0mmとし,射出完了後にコアバック動作を行った。コアバック後の板厚は,2.5mm(発泡倍率:1.25倍)と12.0mm(発泡倍率:6倍)の2水準とした(Fig. 2)。ベース樹脂は自動車用ブロックPPを用い,発泡剤はN2Fig. 2 Schematic View of Injection Process2.3特性評価発泡サンプルの結晶化特性の測定には示差走査熱量計(DSC)を用いた。条件は昇温10℃/min(室温~230℃)→保持1min→降温10℃/min(230℃~室温)とし,昇温時の吸熱プロファイルから融解熱量を,また降温時の発熱プロファイルから結晶化温度を求めた。発泡倍率が1.25倍の低発泡倍率サンプルの気泡構造の観察には,X線CTを用いた。観察視野は0.5mm×0.5mmとし,サンプル表面から内部にかけて1.5mmまで観察した。データ解析は3D形態計測ソフトを用いて気泡径,気泡数及び空隙率を求めた。発泡倍率が6倍の高発泡倍率サンプルの気泡構造の観察には,X線CTでは分解能が不十分であったため,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた。曲げ特性は,平板から幅10mm,長さ80mmの短冊を切り出し,試験速度2mm/minで測定した。吸音測定用のテストピースは,発泡サンプルをφ40mmに切り出し,音波を入射させるため片側のスキン層をカッターナイフで除去した。吸音特性は,φ40mmの音響インピーダンス管装置を用いて垂直入射吸音率を測定した。測定周波数範囲は200~5000Hzとした。3.結果と考察3.1結晶化と発泡挙動バッチ発泡装置を用いて溶融温度から120℃に低下させたときの結晶化挙動は,Fig. 3に示すように純粋なホモPPでは球晶に成長したのに対し,結晶核剤を添加すると,球晶は現れず非常に微細な結晶となった。続いて,発泡挙動をFig. 4に示す。結晶が現れ始めた温度で減圧させると,純粋なホモPPでは球晶の界面で気泡が生成し,大きく成長した。一方,結晶核剤を添加したものでは微細な気泡が緻密に成長した。この結果から,ねらいどおり結晶が発泡-131-