ブックタイトルマツダ技報 2016 No.33
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マツダ技報 2016 No.33
No.33(2016)マツダ技報見落としを防ぐことができる。たとえばセルの条件付き書式という機能を使えば,同じ列に下向きの記号と上向きの記号が混在しているかどうかを判別してTable 3のようにセルの背景の色を自動的に変えるように設定すれば物理的矛盾を容易に探すことが可能である。特に自動車ではたくさんの知覚品質があるので,非常に大きな品質表になりがちであるが,そのような場合でも簡単に物理的矛盾を見つけることができる。(6)背反特性分析プロセスこのプロセスの目的は,ある品質特性の変更による他の品質特性への影響を明らかにすることである。通常は品質表の屋根の部分で背反するかどうかをチェックするが,このチェックはかなり作業時間がかかる。特に自動車などの複雑なシステムにおいては品質特性が多くなるのでその傾向は著しい。たとえば品質特性が10個ある場合でも品質特性間のチェックは90通り(10P2)のチェックとなる。ここで45通り(10C2)ではないのは品質特性間の影響に必ずしも可逆性があるとは限らないからである。このチェックを効率的に行うために前のプロセスで記入した品質特性(望大,望小,望目)の情報を有効に使う。Fig. 2に示すように品質特性展開プロセスで抽出した品質特性を背反特性マトリクスの行と列に転記する。この例において品質特性の「車幅」が望大特性なので「車幅」を大きくした時にマトリクスの列部に記載してある他の特性が影響を受ける方向を考える。「車幅」を大きくしても「車高」には影響しないが「空気抵抗」は大きくなる方向に影響するのでマトリクスのセルに上向きの記号▲を記載する。「空気抵抗」自体の品質特性は小さい方が良いので望小特性となり背反する。この背反はTRIZでいうところの技術的矛盾に相当する。これを解決することが技術課題となる。しばしば対象としているシステムだけの品質特性間の背反性を確認して,従来からある他のシステムの品質特性に対しての影響を見落としてしまう恐れがある。そのまま技術開発を進めてしまうと後で他のシステムの品質特性に悪影響を及ぼしていることに気がつき大きな手戻りの原因となる。そうしたことを防ぐために開発しているシステムと関係する他のシステムの品質特性を品質表に追加し,背反特性を網羅的に確認する必要がある。Fig. 2の例では品質特性の「車幅」を大きくすることにより空調システムの品質特性「冷房性能」が小さく方向に影響を受けるので背反している。こうした背反特性のチェックは,やはり表計算ソフトで作成すれば,Fig. 2のように条件付き書式機能を使ってセルの背景に色をつけることで,簡単に背反項目を確認することができる。本プロセスで抽出した技術的矛盾や前述の品質特性展開プロセスで抽出した物理的矛盾を実際に解決するためのアイディアを出すのは後述するZoom-Zoomフェーズである。Zoom-ZoomフェーズではTRIZなどの手法を使ってこの矛盾を解決する。これらの複数の品質特性のロバスト性を確保するには品質工学でいうところの基本機能を定義して評価することが望ましい。品質工学の適用は後述するDesignフェーズで行う。知覚品質Perceptible quality室内が広いLarge cabin室内が静かであるQuiet cabin燃費が良いGood fuel mileage車幅車高空気抵抗Fig. 2 Quality Characteristics Contradiction Analysis(7)技術課題設定プロセス前のプロセスで発見された物理的矛盾や技術的矛盾,あるいは目標性能とのギャップなどを考慮して技術課題を定義する。これらをまとめて技術開発計画書に記載する。なお技術開発計画書のスケジュールの部分は次のoutlookフェーズで作成する。3.3 outlook(計画)フェーズこのフェーズの目的はプロジェクトの目標を達成できるようにスケジュールをたて,そのスケジュールに基づいて進捗管理を行うことである。またリスクを事前に想定してリスク発生時の影響を最小限にするよう対応を検討しておくことも重要な目的の一つである。プロジェクトマネジメントの基本的な考え方(3)にしたがってWBS(WorkBreakdown Structure )やRBS ( Risk BreakdownStructure)を作成し,それに基づいて計画を作成する。なお,これらの作成にあたってはプロジェクトマネジメントソフトや品質管理ソフトを活用している。3.4 Measure(測定)フェーズこのフェーズの目的は開発するシステムの性能を測定する測定システムを定義し,その測定システムの精度を検証することである。(1)測定システム定義プロセス対象とするシステムの性能を測定するための測定システムを定義する。具体的には測定システムの構成や測定手順などを明らかにする。もし対象とするシステムの性能を測定できるシステムが世の中に存在しない場合は新たに測定システム自体を開発する必要があるので必要に応じてDoMAZDAを使って開発する。(2)測定システム分析(MSA)プロセス前述の(1)のプロセスで定義した測定システムの精度を確認する。具体的にはゲージR&Rと呼ばれる方法で統車幅車高空気抵抗冷房性能品質特性▲▲▼▲▲▼▲Quality characteristics車幅▲▲Width▲-▲-▼車高▼Height▲-▲-▼空気抵抗▼Aeodynamics▼----品質表Quality table品質特性Quality characteristicsWidthHeightAerodynamics品質特性Quality Characteristics車両構造Body structureWidthHeightAerodynamics品質特性マトリクスQuality characteristics matrix空調システムA/C systemAir‐conditioning-139-