ブックタイトルマツダ技報 2016 No.33
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マツダ技報 2016 No.33
マツダ技報No.33(2016)(3)エアバイパスバルブ制御エアバイパスバルブの最大の機能は,コンプレッサーのサージングによるメカニカルノイズとコンプレッサーの損傷を防ぐことである。サージングは経路の流れが不安定になった場合に発生する自励振動が原因であり,その発生の主要因子はコンプレッサー前後の圧力比及びコンプレッサーを通過する空気流量である。よって,SKYACTIV-G 2.5Tでは,従来の吸気管内の圧力ではなく,これらの発生因子によりエアバイパスバルブを作動させるよう制御を構築することで,従来機種よりコンプレッサー下流の圧力を高く維持することを可能とし,アクセルワーク時のトルク応答性を向上した。(4)新気吹き抜け推定制御SKYACTIV-G 2.5Tは,4-3-1排気ポート構造と可変バルブ機構を用いたDynamic Pressure Turboシステムにより,低エンジン回転速度の全負荷トルクを大幅に向上させている(詳細は本稿掲載の新型ガソリンターボエンジン“SKYACTIV-G 2.5T”の開発を参照)。これは,バルブオーバーラップ中に吸入空気を排気管に吹き抜けさせることによる掃気効果を積極的に利用したことにより得られる。筒内の空燃比をコントロールするためには,この排気管に吹き抜ける吸入空気量(以下新気吹き抜け量)を把握する必要がある。そのため,新気吹き抜け量を決定するバルブオーバーラップ量(バルブ通路面積)と吸排気圧力のバランス,オーバーラップ時間,大気圧の因子を一部,代用特性も用いて高精度に推定する制御を構築した。3.モデルベース開発SKYACTIV-G 2.5Tで適応した,過給圧制御と新気吹き抜け推定制御のモデルベース開発について紹介する。(1)過給圧制御開発への適応マツダの制御系の開発では,主に制御モデルの作動検証用としてエンジンやセンサー,アクチュエーターなどをモデル化したプラントモデルを用いていた。SKYACTIV-G 2.5T制御技術の開発では,ある入力を与えた際の出力(例えば,過給圧やウェイストゲート,タービン回転など)が実機と等価となるようプラントモデルの同定を行い,机上のみで過給圧制御モデルの開発を行った。また,網羅的に性能検証を行うためにはターボシステムの影響因子(具体的には,タービン効率,ウェイストゲート流量特性など)の特性を変化させる必要がある。それに加えて,さまざまな運転モードで評価しなければならず,評価期間が膨大になる。SKYACTIV-G 2.5T制御技術の開発では,上述したプラントモデル内のパラメーターを変更することで影響因子の特性変化を模擬して,多くの性能検証を机上で実施することで実車での検証期間を大幅に短縮した。(2)新気吹き抜け推定制御への適応新気吹き抜け量は,非分散赤外線吸収法(NDIR:Non-dispersive infrared absorption method)を用いた実機のガス計測とプラントモデルでの計算を併用した。実機での計測は信頼性の高い結果を得られるが,計測時間が長くなる点がネックとなる。そこで,エンジンシステム全体のプラントモデルではなく,吸気ポートから排気ポートまでを抜粋した専用のモデルを作成し,そこに各条件で実測した吸排気ポートの圧力と温度を入力し算出した。この専用モデル化により,シリンダーへ送り込まれた空気量に対する吹き抜けた空気量で算出される吹き抜け率を,NDIRと同特性かつ誤差1%程度の高い精度で再現することができ,実験評価時間の大幅短縮に貢献した(Fig.6)。NDIRBlow-by air ratio [%]Plant model2%Engine speed = 1500rpm100 120 140 160 180Intake manifold pressure [kPa]Fig.6 Comparison between NDIR and Plant Model-26-