ブックタイトルマツダ技報 2016 No.33

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マツダ技報 2016 No.33

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概要

マツダ技報 2016 No.33

No.33(2016)マツダ技報給制御システムの電源供給ラインにFPC(Fuel PumpController)を搭載し,燃料タンクに搭載されたFDM(Fuel Delivery Module)の構成部品である低圧燃料ポンプへの印加電圧をPWM(Pulse Width Modulation)コントロールして,エンジンの運転状態に応じた高圧燃料噴射システムが要求する燃料量を一定の燃圧で供給する制御システムを搭載した。この制御システムは,①バッテリーの電圧を直接,低圧燃料ポンプに印加するシステムや,②バッテリーの電圧をレジスターを介して,低圧燃料ポンプに印加する電源供給ラインとレジスターを介さない電源供給ラインの2系統を切り替えて制御するシステムに比べて消費電力を大幅に抑制し,CX-5,アテンザ,アクセラ,デミオなどの車両燃費の改善に貢献してきた。2.2低圧燃料供給制御システムの開発課題とその対応新型CX-9は,2.5L直噴ターボエンジンを搭載し,CX-5等に搭載している2.5L直噴NA(Natural Aspiration)エンジンと比べて高出力化しているため,エンジンルーム内部の雰囲気温度が高い。そのため,エンジンルームにレイアウトされた低圧燃料配管の内部の燃料温度(燃温)が高くなるため,低圧燃料配管内の燃圧を高めて燃料ベーパーの発生を抑制しなければならない。また,従来のNAエンジンでは,あらかじめ,低圧燃料配管内の燃温が最大となる条件で,低圧燃料配管内で燃料ベーパーを発生させないような燃圧を制御燃圧とし, FDM内の燃圧制御機構によって一定の燃圧に制御している。そのため,通常の運転では低圧燃料配管内の燃温に対して,過剰な高い燃圧で制御しており,低圧燃料ポンプは必要以上の仕事をしている。今回,従来のNAエンジンより高い燃圧が必要になったため,このいわば不必要な仕事は増大する。一方,エンジンの高出力化に伴い,高圧燃料噴射システムの燃料噴射量要求が増加するため,NAエンジンよりも,大流量の燃料を供給する必要がある。以上より,低圧燃料ポンプの燃料吐出能力を従来比大きく向上させことが必要となり,燃料ポンプの仕事量が増大することにより,NAエンジンよりも燃費・車室内静粛性を悪化させることになる。今回,燃圧制御機構の構造を変更して,低圧燃料配管内の燃温に応じて,燃圧を最適制御できるようにすることで,低圧燃料供給制御システムにおける仕事量を大幅抑制し,課題を克服した。3.1ハードウェア低圧燃料供給制御システムのハードウェア構成をFig. 1に示す。まず始めに,構成する主要部品の機能を説明する。①高圧燃料ポンプは,直噴インジェクターが高圧燃料噴射するために低圧燃料を高圧化する。また,低圧燃料流路の一部を構成する。②FDMは,燃料タンク内の燃料を濾過するとともに,所定燃圧に昇圧し,低圧燃料配管経由で高圧燃料ポンプに供給する。③FPCは,低圧燃料ポンプに印加する電圧を制御する。④センサーとして,低圧燃温センサーは,低圧燃料配管内の燃温を検出する。低圧燃圧センサーは,低圧燃料配管内の燃圧を検出する。⑤PCM( Powertrain Control Module)は,エンジンや車両の状態とセンサーの検出値から,低圧燃料供給制御システムへの要求燃料量と燃圧を設定し,それを実現するために必要なFDMへの印加電圧を演算する。更に,その演算結果をFPCに指示する。⑤PCM④Low pressure fuel temperature& pressure sensor①High pressure fuel pump③FPCFuel tankPower supply line②FDMLow pressure fuel pipeFig. 1 Hardware Configuration of Low Pressure FuelSupply Control System(1)高圧燃料ポンプ高圧燃料ポンプ(Fig. 2)は、エンジンに直付けされており、エンジンとの固体伝導により、熱を受けやすく,低圧燃料流路の中で最も高温になる部位である。従い,高圧燃料ポンプ内部の低圧燃料流路で燃料ベーパーが発生しないようにFDMで燃圧を供給する。つまり,高圧燃料ポンプ内部の低圧燃料流路の燃温がFDMで供給すべき燃圧を決めている。新型CX-9の開発では,新たに高圧燃料ポン3.実現手段新型CX-9は,MBD(Model Based Development)を導入して,低圧燃料供給制御システムを2.5L直噴ターボエンジン専用に開発した。ここでは,その内容を紹介する。Fig. 2 High Pressure Fuel Pump-29-