ブックタイトルマツダ技報 2016 No.33

ページ
8/188

このページは マツダ技報 2016 No.33 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

マツダ技報 2016 No.33

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

マツダ技報 2016 No.33

No.33(2016)マツダ技報巻頭言日本人的気質が紡ぐものつくりMONOTSUKURI cultivated by Japanese philosophy執行役員廣瀬一郎Ichiro Hirose日本の得意技といえば,摺り合わせ,ものつくりの世界でいえば,摺り合わせ開発が真っ先に頭に浮かぶ。摺り合わせという言葉は,どこか相互妥協を連想される方が居られるかもしれない。この言葉自身に,互いの突出から生じる不整合を,削り合わせる相互妥協的な響きを感じるからだが,こと「日本の」と冠がつくと否定をせねばなるまい。日本のもの作りにおける「摺り合わせ」は,相互貢献を生み出す所作であらねばならないと思っているからだ。日本の摺り合わせ開発は,相互貢献がもたらす「全体」に対する価値のため,「個」の各々が主張より調和を重んじ合わせていく手法。従って,この全体価値の置きようが,相互妥協と相互貢献の分水嶺になるはずである。これをクルマ造りが求める価値という軸で振り返ってみると,「当たり前に機能し故障しない製品を,短期に省資源で生み出す。」ことに価値を置いた市場成長の時代には,摺り合わせ開発によって高められた機能的価値が,日本車の存在感となり,これが時代とマッチし,工業製品としてのプレゼンスを高めてきた。その道を進み続け,機能的価値を追求する日本車の傍らで,これを倣い,見栄えによる差別化と外交手腕を駆使し追従する近隣諸国の作り手が,日本車の存在を揺るがす時期も経てきた。しかし,機能的価値の追求だけでは独自の絶対性能軸に基づき,独善的と思えるほどの信念で,クルマの基本性能を究める欧州プレミアムに及ぶに至っていない。彼らに比肩し選ばれ続ける存在であるためには,確固とした特徴,人格ともいえるクルマ自身の個性を示しながらも,お客様に寄り添いその特徴ある性格を磨き続けること。その磨き込みがお客様の感性を研ぎ,その研がれた感性が欲するであろう次への期待を,作り手が上回っていく。こうしてお客様と一緒に紡いでいく期待の連鎖が,機能的価値を超える独自のクルマ文化と世界観を作り,それが互いに離れ難い強固な関係,ブランドを共創していくのだと考える。こういった世界観の作り方こそが,日本固有のクルマ造りの文化であり,広い意味での摺り合わせによってこそ成るものであると信じる。摺り合わせがもたらす世界観は,これまでが全体価値,「全」のための相互貢献であるとすれば,今後は個別価値,「個」の存在感を高めつつ,「全」の価値をもともに高める考え方の進化だととらえたい。「紡ぐ」という言葉には,糸を紡ぐ他に,細やかな作業によって,言葉や作品を形にしていく意もある。糸を紡ぎ織り成すことで,独特の肌理(きめ)を現わしながらも,全体の風合いや質感を同時に創造していく。人と技術を織りなし,各々が個を究め尖らせつつも全体を調和させ,新たな世界観を紡ぎだすことこそが,日本の摺り合わせが追求すべき世界観であり,もの作りの形だと考える。この摺り合わせには,日本人の気質が大きく寄与していると考える,その所以は,調和と他者貢献に美徳と喜びを感じるところに有る。こうした気質の織り重なりが,各々が個を究め尖らせつつも全体を調和させ,お客様に寄りそう日本の摺り合わせ開発を実現させる文化を根付かせているのだと考える。-1-