マツダ技報 2017 No.34
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-98- 6 マツダ技報新宅 則和参考文献量産工程において,面の連続感や法線ベクトルを保証された部品を安定的に生産し,完成車の映り込みを実現するために,バンパーや完成車の検査工程において外観検査ブースを新たに設置し,量産品の面の映り込みの検査工程を導入した。バンパー検査においては,CADデータ上で検査ブース内の照明ピッチ,バンパーの位置を再現させ,データ内での映り込み画像と実バンパーの映り込みの結果を比較し,安定品質のバンパー供給体制を構築した。現在は検査及び比較・合否判定を官能評価に頼っているが,今後はカメラ式の画像判別システムを構築し,定量的かつ自動判定を目指し更なる面品質向上を図る。今回,法線ベクトルによる滑らかな映り込み実現という考えに基づき,机上段階から部品間の面の連続感を実現させる車両構造設計,生産工程設計を取り入れたクルマづくりのプロセスを構築した。Fig. 13にこのプロセスを導入した新型CX-5の映り込みの様子を示す。今回は,バンパーの事例を紹介したが,大型樹脂部品であるバンパーの変形は工程間の搬送・保管中のクリープ変形,塗装乾燥時の熱変形などが複雑に関わりあった現象であり,継続した机上保証レベルの向上が必須であると考えている。また,従来の「製品図面通りの金型を作る」という考え方を,「提供価値である面の連続感を実現する金型形状はどうあるべきか」に変えて実践した。この考えを他の樹脂部品のみならず全ての部品とクルマづくりへと発展させていくことが今後の課題である。「魂動」デザインの持つ生命感や動きの加速感を量産車で忠実に再現させるため,車両外装における面の連続感の実現に取り組んだ。本稿では面の連続感や違和感といった定性的な指標を,法線ベクトルという物理指標でとらえ,曲率と隙による法線ベクトルのズレ基準値を明らかにした。更に,机上段階で面の連続感を実現させる車両構造や生産工程・要具製作プロセスの構築を行った。今後もお客様に感動を提供し続けるために,更なる技術開発を継続していく所存である。術,マツダ技報,No.32,pp.257-262 (2015) ■著 者■田中 慶和永野 恵行No.34(2017)太田 凛(2009)Hood Grille-Upper Front-Fender Front-Bumper Rear-Fender Rear-Bumper Fig. 13 Reflection of New CX-5 (1)三橋ほか:画像と視覚情報科学,コロナ社,pp.72 (2)下野ほか:魂動デザインの実現に向けたそり変形解析技術の構築と金型づくり,型技術,Vol.31,pp.38-39 (2016)(3)佐藤ほか:“魂動デザイン”を実現する金型設計技4.映り込み品質の量産維持管理5.結果と今後の課題6.おわりに

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