マツダ技報 2017 No.34
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*5~8 パワートレイン開発本部 *2~4 統合制御システム開発本部 *1,9 車両開発本部 -99- 論文・解説 18 No.34(2017) マツダ技報 減速・旋回・加速という車両の各運動間の連係性,すなわち「G(加速度)のつながり」の進化が,運転の楽しさや安心感といったダイナミクス性能の質感レベルまでを論じるうえで非常に重要である。著者らはこれまで,「ダイナミクス性能の統一感」と呼ぶブレーキ・ステアリング・アクセルの複合的な性能開発に取り組み,これら運転操作系のフィードバック特性と車両Gの過渡応答特性をリニアに一貫させることで,人にとって制御しやすい車両運動特性を開発してきた(Fig. 1)。これを取り入れた車両は縦軸を前後加速度,横軸を横加速度として描いたリサージュ図であるG-Gダイアグラムにおいて,加速度遷移様態をドライバが積極的に制御しやすい特性を有している(1) (2)。 G-Vectoring Control(以下GVC)は,ドライバのステアリング操作によって発生する車両の横運動に対して,車両自身が前後加速度を最適に連係させる制御である(3)(4)。今回,マツダは一般的な走行領域において「滑らかなGのつながり」を実現し,全てのドライバへあらゆるシーしかしながら,上記のような車両においても,実際には路面のアンジュレーション等,外乱の影響による加速度変動が常に発生している。この変動に対する補正はドライバの修正操作に委ねられるため,達成される「Gのつながり」は各ドライバの運転操作の精緻さに依存し,そもそも人が制御できない微小な変動領域では補正そのものがなされない。今後,車両をドライバがより快適に制御しやすいものへと進化させるためには,微小領域から限界領域に至るまで一貫して,車両自身がGのつながりを担保できるような車両運動制御が必要である。 ンにおける運転の楽しさと安心感を提供するため,細やかな減速度制御が可能な高応答・高精度な駆動トルク制御システムを有するSKYACTIVエンジン(5)(6)をアクチュエータとしてGVCを量産化した(7)。この車両では,直進時の修正操作といった微小な操舵領域から車両運動を過渡的に常時制御することができる。 本稿では,GVCの概要とシステム構成を説明し,制御による車両運動の改善効果とドライバ運転操作行動に与The G-Vectoring Control (GVC) using high response engine torque control has been developed for mass production. G-Vectoring system generates slight deceleration in response to lateral jerk to improve vehicle dynamics. In this paper, the basic concept of G-Vectoring is summarized first, the configuration of the new system will be described followed by subjective and objective investigations into its control effects. Vehicle Dev. Div. 梅津 大輔 *1 Daisuke Umetsu 菅 俊也*6 Toshiya Kan 砂原 修 *2 Osamu Sunahara氏原 健幸*7 Kenko Ujihara Integrated Control System Dev. Div. 高原 康典 *3 Yasunori Takahara椎葉 裕明*8 Hiroaki Shiiba小川 大策 *4 大久 千華子*5Daisaku Ogawa Chikako Ohisa加藤 史律*9 Fuminori Kato Powertrain Dev. Div. 要 約 高応答なSKYACTIVエンジンを用いた世界初の車両運動制御であるG-Vectoring Control (GVC) を量産化した。本システムは車両の横加加速度に応じてわずかな前後減速度を付与することで車両運動性能を高めることができる。本稿ではGVCの基本コンセプトと量産システム構成を説明し,その制御効果を示す。 Summary Fig. 1 Concept of “Harmonized Dynamic Feel” 1. はじめに G-Vectoring Controlの開発 Development of G-Vectoring Control
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