マツダ技報 2017 No.34
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著者らが市販車でのGVC制御実装を検討する過程において,ゲインCxyの在り方や,車両のコンプライアンス特性も考慮した適合の在り方を検討してきた結果,エン■■■■■sgn■■■∙■■■■■■■■■■■■■■■■ (1) -100- .GyGxSteeringWheel AngleVehicleVelocityVehicleStateControlGainPredictionTargetedDecelerationCalculationWheelTorqueReductionCalculationEngineTorqueReductionCalculationEngineTorqueControlPowertrain Control ModuleEngine Torque Controlマツダ技報 パワートレインであるエンジン(内燃機関)をアクチュエータとして制御を実現するのが最適な方策である。しかしながら,これまでパワートレインを一般走行領域の車両横運動の制御装置として用いた事例はほとんどない。 一般的に,パワートレインの制御応答性は電動パワーステアリング等のシャシー制御システムよりも遅く,実際,従来のエンジンではGVCを実現するのに十分な減速度応答と細密さが得られなかった。そこで,圧縮比の見直し等によって大幅に効率を改善し,同時に応答性と制御精度を高めた新世代のガソリンエンジンであるSKYACTIV-G 及びディーゼルエンジンのSKACTIV-D(5) をアクチュエータとして用いることとした。 具体的には,目標加速度からそのときの車両状態を考慮して効率的に燃焼状態を決定する駆動力制御(6)の特徴を生かして,Powertrain Control Module(PCM)内にGVCの制御ロジックを配置し,GVCの目標減速度と駆動力制御の目標加速度を調停して最終的なエンジントルクを決定する統合制御システムを開発した。制御指令Gxを決定するための横運動状態G・yは,ドライバのインプット情報である操舵角と車両速度等の情報から推定される。システムの概念図をFig. 3に示す。 GVC制御コンセプトを一般に市販する量産車両へ採用し,広く市場へ普及させるためには,現在の車両の主流No.34(2017)える影響を示す。 山門らはこれまでの研究で,横運動に応じて前後運動を連係させるための基本的な制御指針として式(1)を提案した(4)。これを,前後・横のGのベクトルを統合制御するという意味で「G-Vectoring Control」と呼ぶ。 ここで,Gxcは車両前後方向の加速度指令,Cxyは制御ゲイン,G・yは車両の横加速度を時間で1回微分した横加加速度,Tsは時定数である。基本的に横加加速度G・yにゲインCxyをかけた値を前後加速度目標として車両に指令するというシンプルな制御則である。 この制御の作動フローをFig. 2に示す。車両が旋回を開始するときには相対的にGxを減らすことで前輪荷重を増やして旋回応答性を改善し,定常旋回以降はGxを増やして後輪荷重を増やすことで旋回安定性を改善するコンセプトである。このとき,前後加速度を縦軸,横加速度を横軸にとり,車両に発生している加速度様態を示す“G-G”ダイアグラムに表すと,乗員にとって不快な加速度変動がない,滑らかな曲線状に遷移する特徴的な運動となる。 ジンブレーキ以下の人が気づかない程度の細密な減速度制御を行った場合には,運転の安心感ともいうべき質感レベルの性能改善効果が得られることがわかってきた。具体的な効果については後述するが,一般的な走行領域においても,ドライバにとってより制御しやすい車両へと進化させることができる。そこで,減速度制御の細密さの目標を0.01G程度と設定し,これを一般市販車両にて実現可能なアクチュエータを検討した。 4.1 実験車両 上記の量産型GVCによる車両のダイナミクス性能改善効果を,実車実験の結果から明らかにする。実験車両の諸元をTable 1に示す。車両はSKYACTIV-Dを搭載したマツダ アテンザ(欧州名 Mazda6)のFF車で,これに量産型GVCを実装して実験を行った(Fig. 4)。 Fig. 2 Concept of G-Vectoring Control Fig. 3 GVC System Configuration Table 1 Test Vehicle Specifications LengthWidthHeightWeight4805184014801520mmmmmmkgG-Vectoring ControlCxy2. G-Vectoring Controlの概要 3. エンジン制御によるシステム構成 4. GVCによる車両運動性能の改善効果

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