マツダ技報 2017 No.34
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菅 俊也・GVCによる車両運動性能の改善効果として,操舵に応じて駆動力制御によるわずかな減速度を付加することで,一般走行領域での滑らかなGのつながりと車両のダイアゴナル旋回姿勢を実現した。-104- マツダ技報参考文献1)車の動きに安定感がある2)車の動きが滑らかで乗り心地が良い3)運転が楽になる4)運転が上手くなったように感じる5)安心速度が高い6)一切の制御介入感がなく自然・GVCによるドライバ運転操作の改善効果として,さまざまな走行条件下において,無駄な操舵をせず,ゆっ以上の評価結果から,GVCはドライバ一般に対して運転操作を改善する効果があり,特に修正操舵の低減効果が高いといえる。具体的には,GVCによって多くのドライバが無駄な操舵をしなくなり,ゆっくりとした操舵で余裕を持った運転ができているといえよう。また,運転中の無意識下の微小な修正操舵が少なくなることで,ドライバの運転操作負担が低減し,結果としてダイナミクス性能のフィーリング向上につながったと考える。さまざまな国籍・スキルを持つ100名以上のドライバで,欧州の高速道路を含む一般公道にてGVC有無の比較評価を行った。効果の感じ方に差こそあれ,GVCに対するネガティブな評価は一切なく,全員がGVC有をより高く評価した。一般的に,車両運動制御による効果は「硬い・柔らかい」や「俊敏・穏やか」といったバランスの問題として扱われることが多いため,人によって好みが分かれるといわれる。しかしながら,今回のGVCでは嗜好性による評価の差は全くなく,ダイナミクス性能の質感向上に関する指摘が主であった。代表的コメントを以下に示す。これらは全て主観的な評価であるが,一方,これまでに明らかにした「ドライバの修正操舵が明確に減少する」という事実と整合しており,意識的であれ無意識であれ,ドライバ自身もそれを感じ取っているといえる。・高応答なSKYACTIV-G,SKYACTIV-Dエンジンを用いた世界初の量産型 G-Vectoring Control (GVC) を実用化した。くりとした余裕のある運転操作ができるようになる。今後も,人にとってより制御しやすい車両のあり方に関する研究を推進し,運転の楽しさや安心感など,ダイナミクス性能のさらなる質感向上に取り組んでいく。(1)梅津大輔ほか:新型プレマシーダイナミックフィー(2)村田親ほか:SKYACTIV-シャシーのダイナミクス性(3)山門誠,安部正人:加加速度情報を用いたドライバ制御特性の新しい解釈方法,自動車技術会論文集, Vol.38,No.4,p.29-34, 2007(4)山門誠,安部正人:横運動に連係して加減速を制御する車両の運動特性に関する検討,自動車技術会学術講演会前刷集,No.8-08,p.9-14, 2008(5)石野勅雄ほか:新世代技術「SKYACTIV パワートレ(6)杉山貴則ほか:SKYACTIV-Dの電子制御システム,(7)梅津大輔ほか:高応答エンジンを用いた量産型G-Vectoring制御車両の開発,自動車技術会春季学術講演会前刷集,No.54-16,p.1310-1314,2016(8)中山沖彦,二見徹,中村友一,El-win R. Boer:運転者負荷定量化手法「ステアリングエントロピ法」の開発,自動車技術会学術講演会前刷集,No.45-99, p.5-8, 1999 砂原 修大久 千華子椎葉 裕明高原 康典加藤 史律No.34(2017)ルの統一感,マツダ技報No.28,p.13-18,2010能,マツダ技報No.30,p.32-36,2012イン」,マツダ技報,No.29, p.29-35, 2011マツダ技報,No.30, p.14-18, 2012■著 者■梅津 大輔小川 大策氏原 健幸6.ドライバの官能評価結果7.まとめ

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