マツダ技報 2017 No.34
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2.2 開発コンセプト CX-4の開発コンセプトは「Exploring-Coupe(エクスプローリング・クーペ)」とした。Exploringは「未知への冒険心」を,Coupeは「独立性,個性」を象徴している。この二つを具現化する要素として,SUVの走破性,スポーツカーの軽快な走り,そして乗用車の使い勝手を また,後方から見た佇まいにおいてもウエストライン -106- マツダ技報 進的価値観を持つ若者達であった。中国の現代社会は,物や情報が飽和状態に近づきつつある。 彼らはその便利さを謳歌しながらも,“真の豊かさ”は物質だけでは満たされないのでは?と疑念を覚え始めている。激動する社会に生きる彼らは,いち早く自分自身の理想を見極めようともがき,各々で異なった“真の豊かさ”の形を模索しており,マツダはこの前向きな姿勢に大きく動かされた。CX-4は,これからの中国社会を切り開こうとする高い志を持ち,時代をリードしようとする人々の頼れる相棒としてユーザーに寄り添い,クルマならではの価値によって彼らの“真の豊かさ”の探求をサポートする。これこそ,ターゲットカスタマーに伝えたいマツダの思いである。 持ちながらも際立った存在感でユーザーや周囲の感情を常に鼓舞するクルマ。マツダが求めたのは,物質的な物差しから脱した現代の合理性を形にすることであった。 その開発で徹底したのは,すべての要素をゼロベースで見直し,物の価値の「本質を見極める」こと。例えば,CX-4は一般的なSUVが持つ広々とした頭上空間や,大きなボリューム感がもたらす他者への威厳を持ち合わせることを価値としていない。その代わりに,クーペのように流麗なデザインが冒険心を刺激し,より低い重心高とパーソナルな空間が,人とクルマの一体感を高めることを重要視した。つまりマツダは,人とクルマの感情的なつながりこそが彼らの求める本質的価値と考えた。 そしてもう一つ,マツダがこだわったのは常用される領域を「徹底的に造り込む」こと。クルマの評価は往々にして,最大馬力や最大荷室容量というカタログ上の数値に支配されがちであるが,マツダはあえて数値では表現しにくい特性の造り込みに注力した。アクセルをわずかに踏み増した時,あるいは愛用のスーツケースを荷室に積み込もうとした時,このクルマはどのように使い手の意思に応えるのか。マツダは普段使いの性能,機能こそが,重要な価値と考えた。こうした「見極めた本質」を「造り込む」ことの積み重ねが,“真の豊かさ”を作り出すと信じ,その最も完成された形のひとつとしてマツダが提示するのがCX-4である。 ターゲットカスタマーの価値観を踏まえ,CX-4が提供すべき最も重要な価値は「お客様の行動力を最大化し,新しいライフスタイルの経験値拡充を促すこと」であると考えた。 3.1 際立つ存在感 クルマとの感情的なつながりを築き,心をときめかせそして,コンセプトの実現に向けて3つのキーワードを設定し,開発活動を開始した。 (1) 際立つ存在感 ① 感情を揺さぶる先進的プロポーション ② 機能で裏付けされたスタイリッシュなインテリア (2) アクティブなライフスタイルをサポートする機能 ① 乗りたくなる積みたくなる考え抜かれたパッケージ ② 道を選ばないラフロード走行性と安心サポート機能 (3) Sustainable Zoom-Zoom ① 爽快なダイナミック性能と走り・燃費の両立 ② どこにでも行ける期待感を醸成する基盤技術 る魂動デザインはマツダならではの独自の価値として緊張感を持った造形美を実現し,世界的に高い評価をいただいた。CX-4は魂動デザインの集大成として「SUVの機能性」と「Coupeの精悍さ」を併せ持つ新たなカテゴリーに執念を持って挑戦した。 (1) 感情を揺さぶる先進的プロポーション 生命感あふれる造形と艶やかさを特徴とする「魂動デザイン」は生き物が持つ動きの美しさを象徴している。CX-4はその進化の方向として,ため込んだ力を一気に放出する強靭な動きの表現強化を目指し「際立つ“トラクション・フォルム”」をデザインテーマとした。その表現として特に注力したのはキャビン高とタイヤ径の関係である。この比率をエキゾティックなクーペと同等とすることで,独自の世界観と新規性を訴求するプロポーションが実現した(Fig.1)。 の絞り込みや,キャビンからリヤピラーへの流麗な面構成もクーペを彷彿とさせる造形とした。しかし,クーペルッキングであっても乗員空間や荷室機能を確保しながら,SUV並みの地上高と走破性を備えている。更にアクティブなSUV表現としてクラッディングやルーフレールNo.34(2017)Fig. 1 Exterior Design 3. 商品特徴

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