マツダ技報 2017 No.34
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-108- マツダ技報 材に衝撃を分散させる構造とした。また,アッパーとアンダーのボデーを連続的につなぐ環状構造とすることで,側面衝突時の客室変形を抑えている。そして,車両の前後端のクラッシャブルスペースに十字形状のバンパー部材を設け,効率的に衝突エネルギーを吸収する構造としている。また,ボデーの強度アップの要となる部位に高張力鋼板を採用し軽量化との両立を実現した。 ィスプレイなどを採用し,視線移動と姿勢変化を最小限に抑え,運転に集中できるコクピット環境とした。 また,白色光で前方を照射し夜間走行時の高い視認性を確保するLEDヘッドランプや,カメラ,レーザー,レーダーで車両の前後をセンシングし運転支援,衝突回避し安全に配慮しながら運転者の負担を軽減するデバイスを装備した。 <静粛性> 前席,後席乗員の会話が弾む静粛性を目指してロードノイズ,風騒音,こもり音の低減を行った。音源を抑えるため,エンジンの吸排気音,タイヤ音や風騒音,そして街中の喧騒まで入音経路の徹底分析を行い,遮音ガラスの採用やドアのシール性向上などの効果的な遮音を施した。 静寂な空間は,乗車した瞬間から乗員全員を安らぎに包み込み,明日への活力を湧き立たせる。 このクルマの企画開発の4年間を通じ,マツダの中国に対する認識は大きく変わった。その最たる驚きは,人々の「豊かさへの強い欲求」と「変わることへの大胆さ」であった。こうした姿に後押しされ,マツダ自身も学ばせてもらい,CX-4に先進的コンセプトを与えることができたと自負している。 る中国の人々をサポートしていく段階に入ったと言える。CX-4はマツダからの彼らへの期待の象徴であり,具体的な応援方法そのものである。 ■著 者■ 岡野 直樹 Human Machine Interface(HMI)領域については,コマンダーコントロール,アクティブ・ドライビング・デCX-4は2016年6月から,いよいよ中国市場での販売を開始した。次は,マツダが新しい時代を切り開こうとすNo.34(2017)現し,世界的に評価の高いSKYACTIV-Gと呼称する2.0Lと2.5Lのガソリンエンジンを搭載している。 開発メンバーは実際に中国環境でクルマの使われ方や走行シーンを調査した結果から,他の市場に対してアクセルを踏み込んだ瞬間の車両の応答性の良さに注力し,エンジンとトランスミッションを中国の環境に合わせるように設計し直した。そして試作車で実際に中国での試験走行を行い,更に最適なチューニングを行った。 エンジン音についても,加速に応じた力強いサウンドが体感できるように,エンジンマウントや排気系に中国独自のチューニングを施した。 また,2.5L Highグレード車にはi-ELOOPを装備し,良好な走行性能と実用燃費の両立を図った。 <操縦性・乗り心地・ブレーキ性能> マツダは,クルマを意のままに操り走る喜びを「人馬一体」感として訴求している。CX-4もこの考えの基,中国の運転環境を調査する中で,低~中速の軽快でキビキビとした車両応答と,高速での直進安定性,それぞれの特性の最適化を目指した。そしてこれらの実現のため,フロントサスペンションのロアーアーム取り付け位置をCX-4専用に設計し直した。 乗り心地については,後席の快適性に重点を置き,サスペンションストロークの確保とダンパーシール材のチューニングを施し,フラットで角感のない乗り心地を実現した。ブレーキは渋滞時から高速走行までの多岐にわたるシーンで,踏み始め初期からの程よい効きと剛性感のあるブレーキフィールを実現した。 (2) どこにでも行ける期待感を醸成する基盤技術 <空力性能> 燃費や航続距離が,ユーザーの行動制約にならないようにするため,クラストップレベルの燃費性能を目指し,空力性能改善に注力した。 通常はフルスケールの空力モデルを製作し実車風洞で空力開発を行うが,CX-4は開発初期からCAEによる流体シミュレーションを活用し,モデル製作なしで理想的な後流渦制御を目指した。シミュレーションのデータはデザイン部門と実研部門で共有化し,お互いの要求を即時に確認しあうことで造形と性能の妥協のない両立を実現した。 <安全性能> 安全を最大限に確保し,事故のリスクを最小限に抑制するマツダの安全思想「MAZDA PROACTIV SAFETY」に基づいて車体構造の開発,装備の設定を行った。 乗員を守るためには客室の変形を抑制する必要があり,衝突時の衝撃をいかに分散し,集中的に吸収するかが重要となる。この対応として前後の衝突は,車両の前後のフレームをストレートにし,キャビンとの結合部は各部住田 和哉 三宮 正義 4. おわりに

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