マツダ技報 2017 No.34
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3rd 30 → 50km/h ― Previous ― New 4.4 抵抗低減 -137- No.34(2017) 4.3 DE精密過給制御 従来型は変速の少ない力強い加速,ガソリンエンジンマツダ技報 上記以外にも,従来型のターボチャージャに対してスペックを見直した。軸受は抵抗を従来型比約70%低減した低抵抗型を採用し,各ターボチャージャのインペラは,ねらいの過給特性に合わせたサイズ変更と最新設計の形状により高効率化を実現した。 のような高回転までの伸び感を実現した。しかし常用域での加速シーンでは,アクセル操作に対する加速度の応答遅れやねらい以上の加速度が発生する場合がある(Fig. 11)。 この意図しない加速度応答のために,踏み足しや踏み戻しなどの余計な操作を強いられている。そこで期待どおりの加速度応答を得る「人間中心の技術」として,過渡時のトルクコントロールを定常走行の噴射量主体から空気量主体へと変更し,以下の開発を進めた。 ・空気量の初期応答性向上 ・空気量のきめ細やかなコントロール 加速度の反応遅れは,気筒ごとの応答性がある噴射制御に対して反応時定数が大きく,反応が遅い過給システムに起因している。そこで,過給システムによる反応遅れをHP-EGRシステムの制御により補った。HP-EGRシステムは過給システムよりも経路が短い。また,EGRバルブを絞ることで,吸気酸素濃度と過給器へ流入する排気エネルギーを同時にすばやく増加させることができる。この特性を利用し,アクセル操作に応じたEGR制御をすることで過給初期の空気量の応答性を向上させた。 また,ひとたび過給が始まれば排気ポート後の圧力,及び流量が増大するため,加速中広範囲にわたって空気量とEGR量を同時確保することができる。そこで,アクセルの操作スピード・量からドライバーの要求加速度を予測し,空気量をきめ細やかに制御することでねらいどおりの加速度を得るとともに,広範囲の運転シーンにおいてNOx抑制とスモーク低減の最適化も同時に実現した。 本制御を採用した新型と従来型の実車加速データの比較をFig. 12に示す。1)はアクセルペダル開度,2)は噴射量で,加速度・トルクを代用している。従来型では応答遅れによる過度なアクセルの踏み込みから戻しがあるのに対し,新型ではアクセル操作の修正なく,期待どおりの加速が得られている。NOxは同等,スモークは低減したうえで,「人間中心の走り」を実現した。 新型では,Fig. 13に示す冷却水制御バルブを採用した。 (1) 冷却水制御バルブ(CCV) Fig. 11 Expected Acceleration Fig. 12 Expected Acceleration Fig. 13 Coolant Control Valve

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