マツダ技報 2017 No.34
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辻 幸治-138- マツダ技報参考文献(2)ピストンリング(3)オイルポンプチェーンシステムこの冷却水制御バルブは機械式ウォーターポンプ,サーモスタットとの組み合わせで,燃焼や摩擦で発生した熱を必要な場所へ必要なタイミングで送ることを可能とした。冷間始動時にシリンダーヘッド,シリンダーブロックへの水流を最小限に制御し,燃焼室近傍以外への熱拡散を抑えることで,シリンダーライナ壁(表面油膜)の昇温早期化による摩擦抵抗低減を実現した。エンジン実験での検証で冷間始動200sec後に,シリンダーライナ壁温として約7℃の昇温効果を確認した。 新型のピストンリングは,2ピースオイルリングでは世界初となる連続する二つの曲率半径からなる同方向偏心バレル形状のプロフィールを採用した。この同方向偏心バレル形状により得られるオイル消費性能の改善分を機械抵抗に機能再配分する事で,リング張力による抵抗を最大で約30%低減した。 新型では,デュアルテンショナ式のチェーンシステムを新開発した(Fig. 14)。 このチェーンシステムは,一般的な張り側のチェーンガイドを油圧テンショナにすることで,エンジンの回転変動によるチェーン張力を油圧テンショナのダンピングで緩和し,チェーン張力の大幅な低減を可能とした。これにより,最大チェーン張力を全域で約20%低減した。 「新型SKYACTIV-D 2.2」は,従来型の進化版として,熱効率を支配する各制御因子の改善と,燃焼・過給など制御技術の進化により,更なる加速レスポンスの向上,静粛性の向上を実現した。これらのハード&ソフト両面からの技術の進化により,上質で意のままのレスポンスを体感できるクリーンディーゼルエンジンとして仕上がった。(1)森永ほか:SKYACTIV-D エンジンの紹介,マツダ(2)T. Sakono, et al.:20th Aachen Colloquium Auto mobile and Engine Technology, pp.943-965 (2011)(3)平林ほか:小排気量クリーンディーゼルエンジンSKYACTIV-D 1.5 の開発,マツダ技報,No.32, pp.21-27(2015) 技報,No.30,pp.9-13(2012)■著 者■山谷 光隆上杉 康範平林 千典末國 栄之介松本 正義No.34(2017)Single tensioner system Dual tensioner system Fig. 14 Comparison of Oil-Pump Chain System 5.おわりに

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